読書三昧(仮免) 禹歩の痛痒アーカイブ

乱読中年、中途と半端を生きる

2023-11-01から1ヶ月間の記事一覧

イマヌエル・カント『人間学』(原著「実用的見地における人間学」1798, 岩波書店カント全集15 2003)

カントが長年にわたってひろく講じてきた「人間学」を晩年にまとめて出版した講義録。三大批判書や『単なる理性の限界内での宗教』 、『永遠平和のために』 などの理論的に突き詰めた論理構成の厳しさのある著作とくらべると、緊張感はすこし緩んでいて、2…

松浦寿輝『詩の波 詩の岸辺』(五柳書院 2013)

1999年から2011年にかけて書かれた松浦寿輝による日本の現代詩への誘いの文章。 2009年度第17回萩原朔太郎賞受賞作でもある自身の詩集『吃水都市』を含めて、本書で取り上げられている詩集や詩人は、詩歌文芸にすこしでも関心のある読者にとっ…

堀口大學訳『月下の一群』(初版 1925, 岩波文庫 2013)

大正14年9月、10年ほどの間に訳しためていたフランスの最新の詩人たちの詩を集めた大部なアンソロジー。66人339篇にわたる訳業は、まとめるにあたっては、フランスの最新の詩の動向を伝えることはもちろん、日本語における詩の表現の見本となるこ…

『ペーター・フーヘル詩集』(小寺昭次郎訳 積文堂 2011)

旧東ドイツの詩人ペーター・フーヘル(1903-1981)の生前刊行詩集全五冊のうちから代表的な第一詩集『詩集』(1948)と第二詩集『街道 街道』(1963)を全訳刊行したもの。 ペーター・フーヘルは1946~62年までの間国際的な文芸雑誌『意味と形式』の編集者で…

ブルーノ・シュルツ『シュルツ全小説』(工藤幸雄訳 平凡社ライブラリー 2005)

ポーランドのユダヤ系作家・画家・ホロコースト犠牲者。 ヴィトルド・ゴンブローヴィチ、スタニスワフ・イグナツィ・ヴィトキェヴィチとともに「戦期間ポーランド・アヴァンギャルドの三銃士」とも呼ばれた奇想の作家。 カフカ的な世界と比較されることも多…