2024-01-01から1ヶ月間の記事一覧
言語遊戯が苦もなく自然にできるような人が作った作品。99種類用意された文体の見本市のようで、描かれた内容のズレがもたらす現実世界からの浮遊感もついてくる。1ページから2ページ程度の短い文章とはいえ、内容的にはほとんど代わりのないものを99回も…
現代イタリアの哲学者ジョルジョ・アガンベンの入門書で、イギリスで「ラウトリッジ・クリティカル・シンカーズ」(ラウトリッジ批評的思想家)シリーズとして刊行されているものの日本語訳、というところが少し変わっている。アガンベンと言えば普通はホモ…
52歳で亡くなったレッシングが50歳の時に刊行した戯曲。論争好きで知られていたレッシングが49歳の時、啓蒙主義の立場からルター派の協会の牧師との宗教論争し、その論争から宗教関係著作の出版禁止になったことへの対抗策としてものしたのが本作であ…
意識は自由であり、その自由は知覚の現実世界を無化したところにある想像力の非現実世界において実現する。こうまとめてしまうと反動的な思考のようにもとらえられてしまいそうだが、そうではない。カントの『判断力批判』とは異なる視点からの美学、芸術論…
サルトル最初期の論考3篇を収めた一冊。 「想像力 ―デカルトからフッサールまで―」(初出 1936, 訳:平井啓之) 知覚と想像力、現実と非現実、受動的綜合と能動的綜合。知覚を成立させる素材と志向と想像力によって像(イマージュ)を成立させる素材と志向と…
実現はしなかったがイタロ・カルヴィーノとクラウディオ・ルガフィオーリとともにイタリア文化のカテゴリー的な諸構造を探求するための雑誌刊行を企画していたことがベースとなって考えられ書きつづけられたエッセイの集成。 そっか、カルヴィーノとアガンベ…
管啓次郎は現時点で65歳、明治大学大学院教授、ミネソタ大学アジア中東研究学科客員主任教授で詩人。今もっとも生産的で注目されている詩人のひとりであるだろう。文書空間と現実世界、動物や昆虫や樹木がいる自然界と人間界とを、行ったり来たりというか…
マラルメの研究・翻訳で多くの著作を持つ元NHKキャスターで放送大学教授でもあった柏倉康夫が25年の歳月をかけて書き上げた大部の梶井基次郎伝。多彩な人物のライフワークのひとつであろう。こだわりを持っている対象ではあろうが、著者の多才さゆえに…
どちらかといえば文章読本的な比較芸術論。空間展開する絵画彫刻作品と時間展開する文芸作品の表現の志向性の違いを説いている。 レッシング自身が劇作家であり詩人でもあるため、ギリシアローマの古典作品を取り上げて技巧を評価しているところがもっとも読…
近未来における歴史的変換についての予測が多く当たることで有名なフランスの歴史人口学者エマニュエル・トッド。日本でもっとも注目される学者のひとりであるそのエマニュエル・トッドが,コロナ禍真っ只中の日本で発信した思考指南書。刊行時69歳、自ら…
先日ジル・ドゥルーズの『ニーチェと哲学』(原著 1962, 国文社 1974)をちょっとした永遠回帰の実践のつもりで足立和浩訳で久方ぶりに読んでみた。現在流通している訳書は河出文庫の江川隆男訳(2008)だが、珍しく学生時代に購入した書籍が残っていて、そ…
現代文学において詩というと抒情詩を思い浮かべるのが常ではあるが、しばらく前までは物語詩や叙事詩、劇詩のほうが一般的であったといってよいだろう。ホメロス、ウェルギリウス、ダンテ、シェークスピア、ミルトン。日本でいえば平家物語や世阿弥・金春禅…
三木清(1897-1945)は20世紀前半に活動した京都学派の哲学者。西田幾多郎・ハイデガーに師事。『パスカルに於ける人間の研究』から著作活動がはじまり遺稿の親鸞ノートで終わる思索活動は、一方で宗教的なものに惹かれながら、マルクス主義論者としての活動…
150年ほど前に刊行されたウォルター・ペイターの唯美主義の書『ルネサンス』は美術や文芸の世界にスキャンダルを巻き起こし、ペイターの学者としての道や文筆家としての活動に困難さをもたらすことになった著作であるとともに、世紀末芸術を加速させると…
松浦弘明はイタリア中世・ルネサンス美術史を専門とする日本の美術史学者。現在多摩美術大学教授。直近の著作は河出書房新社刊『ラファエロ』(2017)か。イタリア・ルネサンスにどっぷっり浸かりたいと思わせてくれる研究者。現時点ではおそらく世間的に松…