読書三昧(仮免) 禹歩の痛痒アーカイブ

乱読中年、中途と半端を生きる

池上高志『動きが生命をつくる 生命と意識への構成論的アプローチ』(2007)

著者はじめての単著。私が手にしているのは2011年の第4刷。最先端のとがった研究成果を一般読者向けに紹介してくれている。一般向けではあるのだが、前提知識がないとある程度自分で調べながら読み進めていかないといけないかもしれない。いちいち調べるのが面倒であれば、池上氏も共著者であるO'Reilly Japan - 作って動かすALife を先に読んでおくと、わりと面食らわずに読み進めることが出来る。

本書の売りは、書名にもなった「動きが生命をつくる」という視点の強調、つまり、動きながら生命活動の規則性と環境世界を同時に創出していくという発想が研究の中心にあるというところだ。

要点は二つある。ひとつは、規則の学習と規則の使用が分離できないということが、人の言語を語るうえで本質的な問題であるという点。次に、規則は人と人との相互作用を通して、運動のスタイルの中に宿るという点、である。(p163)

 

生命システムには、自分が取りに行くという能動性がある。つまり入力信号が固定されたセンサーに順次にただ入ってくるわけではなくて、その入力信号によって次に新しいセンサー情報をみにいく。このセンサーと能動的運動の連なりが、結果としての全体性を与える。(p223)

機械、生命、社会、芸術と言及先は多方面に向かうが、それらが統一ビジョンのもとにより精緻に語られるようになると、さらに面白いことになってくるのではないかと期待させてくれる一冊。

 

青土社 ||哲学/思想/言語:動きが生命をつくる

2007

目次:
序章 力学系を超えて
第2章 中間層の必要性
第3章 人工生命系
第4章 ブライテンベルグ再解釈
第5章 ダイナミカルなカテゴリー
第6章 コミュニケーション
第7章 意識/能動性/進化の問題
第8章 アート
あとがき

池上高志
1961 -