存在するものの真理を生起するものとしての芸術作品、世界と大地との間の闘争としての芸術作品。ハイデガーの用いる「真理」という概念については訳者後記でも強調されているように「空け開け」「アレーテイア」「不伏蔵性の領域」という意味でもちいられて…
アガンベンの単著に入っていない論文の集成の書の翻訳。全21篇。 総ページ数500超で、造本も背表紙の厚さを見るといかついが、アガンベン思想の全体的枠組みを体感するのにはもってこいの著作。いずれかの単著を読み終えたのち、広範な領域にわたるアガ…
「ホモ・サケル」シリーズの一冊。大量消費社会を超え、生政治にも取り込まれることのない「到来する共同体」に向けてのケーススタディ的著作。イエスのように生きようとしたアッシジのフランチェスコとその後継者としてのフランシスコ会の修道士たちを中心…
記憶と今現在のあいだに生み出される新しいバランス。 古いものを知っていないことの危うさが読みすすめるごとに深く深く突き刺さってくる。西洋美術史の奥行きに驚かされる論考。 www.hanmoto.com 【目次】序 アビ・ヴァールブルクと『ムネモシュネ・アトラ…
アビ・ヴァールブルクはドイツの美術史家でイコノロジー(図像解釈学)の創始者。パノフスキーに影響を与え、カッシーラーとも交流が深かった(三人ともにユダヤ系ドイツ人)。 以前から気にかかっていた人物であったが、ジョルジョ・アガンベンの著作でよく…
ベンヤミンやショーレムを参照しながらパウロの書簡におけるメシア的なもの・メシア的な時間について考察した短期集中講義録。メシア的な時間とは「過去(完了したもの)が現勢化していまだ完了していないものとなり、現在(いまだ完了していないもの)が一…
動物から人間を隔てているものは言語活動ではなく言語活動をもたない状態(インファンティア:タイトルでは幼児期と訳されている)をも持っているところにあるとし、言語活動の主体を構成しつつ行う人間の言語活動の諸相を言語学・哲学・人類学・神学など様…
創作において自分にも他人にも一貫してきわめて厳しい態度を取り、容易に褒めるようなことがなかったジャコメッティが、自作を撮影した写真に関してほぼ手放しで称賛の意をあらわし、ごく身近な関係者にも見ることを勧めた珍しい写真作品集。 生まれ故郷と作…
ジャコメッティ晩年の63歳、胃がん手術明けの年、1964年9月12日から10月1日までの18日間に、パリのアトリエにおいて美術評論家でエッセイストのアメリカ人ジェイムズ・ロードをモデルとして油彩作品を制作した際の記録。初日からモデルがパリ…
2005年5月から2024年の現在に至るまで横浜でつづいている勉強会「土曜の午後のABC」の最初期の芸術全般を扱った講義をまとめて一冊にしたもの。上下二段組で本篇全437ページとボリュームは相当なものだが、内容的には平易な言葉でそれぞれの…
20世紀のフランスを代表する詩人のひとりイヴ・ボヌフォアの重厚なテクストとともにアルベルト・ジャコメッティの生涯と創作の軌跡をたどることができる充実した作品集。 本書は20年ほど前に池袋西武の三省堂美術洋書コーナーにて9000円くらいで購入…
矢内原伊作がジャコメッティに出会いはじめてモデルとなった1955年から最後にモデルをつとめた1961年までの手帖を編集したジャコメッティ晩年の創作現場を身近にうかがえる貴重な資料集。日々繰り返されるジャコメッティの感覚と思考の基本的な動きが濃密に…
日本で最初期にジャコメッティに注目し、それぞれ渡仏しジャコメッティ自身と深い交流を持ったふたりの文学者による対談。1980年に日本で開催された「ジャコメッティ版画展」の最終日におこなわれた公開対談をベースに、出版を念頭において改めておこな…
ラカンが最も多く参照する哲学者であるアリストテレスにおける「原因」と「偶然」の概念から、ラカンの精神分析がいかなる部分を継承し、さらに超えていったかを、主体の構造という観点から説いた一冊。著者のフランス語の学位論文をベースに翻訳再編集した…
およそ二年ぶりくらいの再読。ほとんど忘れているが前回と比べて違うところに気がひかれているという感触もあり頭から通読した。借り物だと意図せず再読することもあるので、そこは流れに任せている。 不安は裏切らない、騙さない。他なるものの脅威としてあ…
言語の核心にある否定性、空隙、空無、未決定、無底について、ハイデガー『存在と時間』の「ダーザイン」の「ダー(そこ)」と、ヘーゲル『精神現象学』の「このもの」から、代名詞の指示作用、「意味内容をもたない空虚な記号」としての性格から考察してい…
第二次世界大戦期の独裁国家誕生以降、政治的には世界的に例外状態あるいは緊急事態がつづいていることを指摘して、行政の執行権力の拡大による法の力に関わる危うさの増大を考察した濃密な一冊。法学に疎いものにはなかなか敷居が高いが、現在においても継…
松岡正剛の日本の詩歌に関する文章を、イシス編集学校で学んだ歌人でもある編集者米山拓矢(米山徇矢)がまとめ上げた、濃密な一冊。多くの本から切り取られた断片の集積であるにもかかわらず、古代から現代までの日本の詩歌芸能の推移を追うようににして積…
みすず書房の『完本 ジャコメッティ手帖』をちょっとずつ読みすすめているうちに詩人としての矢内原伊作の作品にも目を通しておこうと思い手に取った一冊。サルトルの実存主義などを学びにフランスに留学しているときにジャコメッティと出会い、長い時間モデ…
有用性の軛からの解放の諸相について書かれた短めのエッセイ集成。名前のないものとなって必要に追いたてられることなく遊び戯れるという至福。資本主義というよこしまな魔法使いから逃れて自らが魔術師となって行為することの可能性に気づかせようとアガン…
日本独自編集のアガンベンの芸術論集。絵画が中心で、映画と演劇とダンスが少々配合されている。全20篇。こういった著作では著者の論考そのものも楽しみであるのはもちろんだが、自分の知らない作家に出会えることの喜びもある。本書では日本ではあまりな…
哲学とキリスト教神学に加えインドのタントラ仏教の教えから人間における自由について考察した論考。働かないこと、遊ぶこと、踊ることによって現世にニルヴァーナ(涅槃)が出来することを説いている。西洋においても東洋においても秘儀に属するようなこと…
ブランショ、デリダ、ドゥルーズなどによって論じられるメルヴィルの特異な短編小説「バートルビー」(1853)の新訳とアガンベンのバートルビー論を組み合わせて刊行された一冊。本篇と序文という形で刊行される形式は海外では多くあるようだが、メルヴィルの…
アガンベン28歳の時の処女作、芸術論。ベンヤミンに多大な影響を受け、驚くべき博識を支えに、潜勢力を重視する独自の思考を組み上げていくアガンベンのはじまりの著作。 芸術家と鑑賞者にともに存在する批評的意識、芸術と芸術に関わる自分自身を解体しつ…
苦しみ多い現実を凌いでいけるように、時に情動を解放してこわばりをほぐし、区切りをつけて新たに向き直るようにしてくれる、笑い、泣き、たくらみの様々な様相と効能を説き、近代以降に衰退してしまったそれらの技芸や習俗となっていた振舞いの再興を願い…
遍在する一者。外部のない一者。究極の境界を持たない一者ではあるが、その内に差異を持ちながら対立する複数の個体が存在するという世界観を説くブルーノの著作。岩波文庫にも訳出され、主著と言われている『無限、宇宙および諸世界について』(1584)からも…
ジュネの芸術論6篇。レンブラント2篇、ジャコメッティ、綱渡り芸人でジュネの恋人だったアブダラへのメッセージ、犯罪少年たちへ向けたラジオ原稿、演劇論。貧しさと闇を抱えているがゆえに異彩を放ちつづける者たちへの讃歌。既成の枠組みを支える世俗的…
言語遊戯が苦もなく自然にできるような人が作った作品。99種類用意された文体の見本市のようで、描かれた内容のズレがもたらす現実世界からの浮遊感もついてくる。1ページから2ページ程度の短い文章とはいえ、内容的にはほとんど代わりのないものを99回も…
現代イタリアの哲学者ジョルジョ・アガンベンの入門書で、イギリスで「ラウトリッジ・クリティカル・シンカーズ」(ラウトリッジ批評的思想家)シリーズとして刊行されているものの日本語訳、というところが少し変わっている。アガンベンと言えば普通はホモ…
52歳で亡くなったレッシングが50歳の時に刊行した戯曲。論争好きで知られていたレッシングが49歳の時、啓蒙主義の立場からルター派の協会の牧師との宗教論争し、その論争から宗教関係著作の出版禁止になったことへの対抗策としてものしたのが本作であ…