読書三昧(仮免) 禹歩の痛痒アーカイブ

乱読中年、中途と半端を生きる

マルティン・ハイデッガー『芸術作品の根源』(原著 1960, 訳:関口浩 平凡社ライブラリー 2008)

存在するものの真理を生起するものとしての芸術作品、世界と大地との間の闘争としての芸術作品。ハイデガーの用いる「真理」という概念については訳者後記でも強調されているように「空け開け」「アレーテイア」「不伏蔵性の領域」という意味でもちいられているということを念頭に置いて置いたほうがよい。また「芸術作品の根源」として或る民族の歴史的現存在ということが強調されているが、民族云々に関しては今現在の感覚からすると強調されすぎていると感じるところもあると思う。
芸術とは本質的には詩作であるということでヘルダーリンなどの詩が最も本質的なものとして最終的に引用され論じられてはいるが、本書のカバー図版でもあるゴッホの「靴」について言及しているところが実際には最もよく知られている部分であろう。今回久しぶりに本書を読み直してみて、芸術は歴史のうちにあらわれるということが、このゴッホの靴の絵に関するところでわりとよく感じ取れたのではないかと考えている。時代的には19世紀末になって描かれた一組のくたびれた皮の紐靴は、その当時の農夫の労働の真理を表しているというところが前回よりも印象に残った感じだ。この靴の絵は、描かれた当時すぐには評価されることはなかったが、その後の鑑賞者に真理として受け止められるような亀裂・強度を持っている。そしてその鑑賞者の中心は貴族ではなく近代のブルジョワであり、今現在さらに大衆化されるに至っているという考えが浮かんできたのであった。

 

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【目次】
序言
1 物と作品
2 作品と真理
3 真理と芸術
後記
補遺

導入のために ハンス・ゲオルグ・ガダマー

【付箋箇所】
19, 22, 32, 44, 54, 61, 66, 73, 75, 82, 84, 108, 109, 115, 123, 128, 131, 142, 143, 153, 158, 176, 

マルティン・ハイデッガー
1889 - 1976

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ハンス・ゲオルグ・ガダマー
1900 - 2002

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関口浩
1958 - 

ジョルジョ・アガンベン『思考の潜勢力 論文と講演』(原著 2005, 訳:高桑和巳 月曜社 2009)

アガンベンの単著に入っていない論文の集成の書の翻訳。全21篇。

総ページ数500超で、造本も背表紙の厚さを見るといかついが、アガンベン思想の全体的枠組みを体感するのにはもってこいの著作。いずれかの単著を読み終えたのち、広範な領域にわたるアガンベンの思索と著述活動の方向性を一度しっかりと確認しておくのに適した書物。

近代から現代にかけての思想領域の言説の布置を幾通りか提示しつつ自らの思考を展開していくさまは、最先端に挑んで新たな領域を開拓するとともに今までになされてきた思考の系譜を提示するという、理想的な教師の言説を担っているように感じ取れる。

書物としての外形に怯えずに、現代哲学の実践的入門書としてとりあえず手にしたほうが良いと勧められる一冊。

フーコードゥルーズそれぞれの最後のテクストについて論じた最終掲載論考「絶対的内在」47ページを読んでみて、本書を最初から全篇読んでみるかどうか決めてみるのもよいかと思う。

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【目次】

第一部:言語活動
 もの自体
 言語活動のイデア
 言語と歴史—-ベンヤミンの思考における言語的カテゴリーと歴史的カテゴリー
 哲学と言語学—-ジャン-クロード・ミルネール『言語学入門』
 気分と声
 自我、目、声
 「私」と言うことの不可能性について—-フリオ・イェージにおける認識論的パラダイムと詩的パラダイム

第二部:歴史
 アビ・ヴァールブルクと名のない学
 記憶の及ばないものの伝承
 *se 絶対者と生起
 起源と忘却—-ヴィクトール・セガレンについて
 ヴァルター・ベンヤミンと魔的なもの—-ベンヤミンの思考における幸福と歴史的救済
 コメレル 身振りについて
 メシアと主権者—-ベンヤミンにおける法の問題

第三部:潜勢力
 思考の潜勢力
 現事実性の情念—-ハイデガーと愛
 ハイデガーとナチズム
 記憶の及ばない像
 パルデス—-潜勢力のエクリチュール
 人間の働き
 絶対的内在
 
翻訳者あとがき


【付箋箇所】
28, 32, 36, 39, 41, 49, 50, 62, 82, 98, 104, 116, 119, 120, 126, 138, 142, 145, 158, 175, 177, 192, 194, 210, 220, 223, 225, 228, 236, 245, 248, 254, 257, 291, 308, 315, 328, 344, 350, 364, 367, 380, 398, 401, 402, 404, 408, 410, 414, 431, 434, s436, 441, 446, 457, 461, 483, 490, 493, 505


ジョルジョ・アガンベン
1942 - 

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高桑和巳
1972 - 

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ジョルジョ・アガンベン『いと高き貧しさ 修道院規則と生の形式』(原著 2011, 訳:上村忠男+太田綾子 みすず書房 2014)

ホモ・サケル」シリーズの一冊。大量消費社会を超え、生政治にも取り込まれることのない「到来する共同体」に向けてのケーススタディ的著作。イエスのように生きようとしたアッシジのフランチェスコとその後継者としてのフランシスコ会の修道士たちを中心に、世俗の法とは異なる領域で生きようとした人々の生の形式と世俗への主張について考察している。修道院においては人間の再生産(生殖)が基本的には行われないため、外部からの新たな参入者がなければその共同体は衰退し途絶えてしまうが、出家した人々の生が出家しない一般庶民にも影響を与えるということはなにも西欧世界に限ったことではなく、その歴史的な動向を西欧のキリスト教社会研究から学ぶということは、現代日本に生きる者にとっても参考になることは多い。

 

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【目次】
序文

I 規則と生
1 規則の誕生
2 規則と法律
3 俗世からの逃亡と創憲

II 典礼と規則
1 生の規則
2 口述と書記
3 典礼のテクストとしての規則

III 〈生の形式〉
1 生の発見
2 法権利を放棄する
3 いと高き貧しさと使用

解説 所有することなき使用  上村忠男
訳者あとがき

【付箋箇所】
17, 33, 35, 37, 76, 83, 92, 108, 110, 112, 136, 144, 147, 150, 161, 162, 179, 194

ジョルジョ・アガンベン
1942 - 

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上村忠男
1941 - 

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太田綾子
1947 - 

 

アビ・ヴァールブルク『ヴァールブルク著作集 別巻1 ムネモシュネ・アトラス』(ありな書房 2012 著:伊藤博明+加藤哲弘+田中純、企画構成:石井朗)

記憶と今現在のあいだに生み出される新しいバランス。

古いものを知っていないことの危うさが読みすすめるごとに深く深く突き刺さってくる。西洋美術史の奥行きに驚かされる論考。

 

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【目次】
序 アビ・ヴァールブルクと『ムネモシュネ・アトラス』 伊藤博
パネルA 人間が位置づけられる宇宙的、地上的、系譜学的関係性のさまざまなシステム。……
パネルB 宇宙的体系の人間への投射のさまざまな段階。……
パネルC 火星の表象の発展。擬人的解釈に基づくイメージからの離脱……
パネル1 予言を目的とする、身体の一部分の上に投影された宇宙。……
パネル2 ギリシアの宇宙の表象。天における神話的形象。……
パネル3 古代の図像の東方化。怪物としての神。……
パネル4 パネル4から8。古代における原型の形成。闘い。(巨人たちによる)略奪。……
パネル5 大地母神キュベレ。子を奪われる母。……
パネル6 略奪(プロセルピナ、冥界[パネル5])。犠牲(ポリュクセネ)。……
パネル7 勝者の情念。古代ローマの勝利感。凱旋門。……
パネル8 太陽への上昇。
パネル20 ギリシア宇宙論のアラビア的実践への発展。
パネル21 東方的な古代。東方的な枠組における古代の神々……
パネル22 スペイン的 = アラビア的実践(アルフォンソ)。……
パネル23 南イタリア = アラビア的古代。……
パネル23a 運命の賽子のための、小宇宙としての規則的な立体。……
パネル24 惑星の子どもたちについての教説。(北方?)。実践の理論的基礎。
パネル25 リミニ――呪物的天球表象と対置されるプネウマ的天球表象。古代的形態。
パネル26 リミニからスキファノイア宮への移行としての総合的で体系的な宇宙論的暦。……
パネル27 スキファノイア宮。
パネル28-29 同時代の動的な生(移行――スキファノイア宮の第三層)。……
パネル30 ピエロ・デッラ・フランチ[ェスカ]。……
パネル31 前パネルに続く――北方人の場合。祈念像。……
パネル32 グロテスク。中央の女性を囲んでの踊り。……
パネル33 神話のテクストにおける図解。……
パネル34 運搬車としてのタピスリー。主題――狩猟と行楽。……
パネル35 「フランス風」の古代。ヘラクレス、パリス(略奪)、パリス(審判)、オルペウス。……
パネル36 ペーザロ = 南における「フランス風」古代。
パネル37 彫刻の形態での古代世界の浸透。……
パネル38 古代との関連における混合様式。宮廷生活。愛の象徴的表現。……
パネル39 ボッティチェッリ。理想的様式。バルディーニ――古代化する愛1と2。……
パネル40 古代的気質の発露。連続する描写……
パネル41 殲滅への情念[パネル5参照]。犠牲。魔女としてのニンフ。情念の解放。
パネル41a 苦痛の情念。神官の死[パネル6参照]。
パネル42 エネルギーを逆転させた苦痛の情念(十字架のもとのペンテウスとマイナス)。……
パネル43 市民文化の代表者としてのサッセッティ――ギルランダイオ 肖像画の侵入……
パネル44 ギルランダイオにおける勝者の情念。入場許可の第一段階としてのグリザイユ。……
パネル45 身振り言語の最上級。自意識の逸脱。類型化されたグリザイユから抜け出た……
パネル46 ニンフ。トルナブオーニ・サークルにおける「足早に運ぶ女性」。……
パネル47 守護天使と女首狩り族としてのニンフ。……
パネル48 フォルトゥーナ。みずからを解放する人間(商人)の対決のシンボル。
パネル49 抑制された勝者の情念(マンテーニャ)。「隠喩のようなもの」としてのグリザイユ。……
パネル50-51 分割と手で扱いうること。ムーサたち。徳と悪徳。調和的体系。……
パネル52 トラヤヌスの正義 = 馬で蹂躙する者のエネルギーの逆転。……
パネル53 ムーサたち。天と地のパルナッソス。(ラファエッロ)マンテーニャ……
パネル54 同時にホロスコープ‐実践をともなったオリュンポス化、および神‐父による……
パネル55 上昇なきパリスの審判。石棺に倣って、ペルッツィとマルカントニオ。……
パネル56 上昇と墜落(ミケランジェロ)。磔刑の神格化。……
パネル57 デューラーにおける情念定型。マンテーニャ。模写。オルペウス。……
パネル58 デューラーにおける宇宙論
パネル59 北への惑星の移住。
パネル60 北方の宮廷の祝祭行事。海洋の支配――地理上の発見の時代。……
パネル61-62-63-64 「従う神」としてのネプトゥヌス。クォス・エゴ・タンデム。……
パネル70 略奪の描写におけるバロック期の情念表現。演劇。
パネル71 演じられる、誓約と盾の持ち上げ。「公式芸術」。
パネル72 公式芸術とは対照的なレンブラント。聖餐――クラウディウス・キウィリス……
パネル73 演劇のメデイアとレンブラントのメデイア――熟慮のための思考空間。……
パネル74 熟慮。マザッチョ、ラファエッロ、レンブラントにおける聖ペトロ。……
パネル75 魔術的解剖。内臓占い――魂の場所の探索。……
パネル76 危険にさらされた幼児の保護――トビウッツォロ[小さなトビアス]……
パネル77 ドラクロワ/メデイアと嬰児虐殺。切手/バルバドス――クォス・エゴ・タンデム……
パネル78 教会と国家。世俗的権力の放棄の下での宗教的権力。
パネル79 ミサ。神を食べること。ボルセーナ、ボッティチェッリ。……

『ムネモシュネ・アトラス』序論 アビ・ヴァールブルク著/加藤哲弘訳
『ムネモシュネ・アトラス』序論 解説 田中純
解 題 ヴァールブルクの天球へ(AD SPHAERAM WARBURGIANAM)
──『ムネモシュネ・アトラス』の多層的分析 田中純
解 題 不在のペルセウス(Perseo inesistente)
   ――『ムネモシュネ・アトラス』と占星術 伊藤博
文献一覧
あとがき

【付箋箇所】
8, 9, 22, 76, 163, 196, 205, 219, 236, 265, 266, 282, 306, 309, 317, 328, 339, 349, 389, 402, 407, 458, 475, 497, 565, 591, 602, 608, 627, 630, 634, 648, 651, 680,  682, 696, 701

アビ・ヴァールブルク
1866 - 1929

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伊藤博
1955 - 

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加藤哲弘
1953 - 

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田中純
1960 - 

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アビ・ヴァールブルク『ヴァールブルク著作集 別巻 2 怪物から天球へ―講演・書簡・エッセイ―』(ありな書房 2014 訳/著:伊藤博明+加藤哲弘、企画構成:石井朗)

アビ・ヴァールブルクはドイツの美術史家でイコノロジー(図像解釈学)の創始者パノフスキーに影響を与え、カッシーラーとも交流が深かった(三人ともにユダヤ系ドイツ人)。

以前から気にかかっていた人物であったが、ジョルジョ・アガンベンの著作でよく参照されていることがきっかけとなり、実際の著作を手に取ってみることとなった。未完に終わった晩年の図像解釈学の集大成的研究「ムネモシュネ・アトラス」が本命ではあったが、予備知識がほとんどない状態で向かい合っても入っていけない惧れがあったので、テーマも執筆発表時期もいろいろなものである講演・書簡・エッセイを集成した著作集別巻から様子を探ることにした。

刺激を受けたのは以下のような論点

  • 点と線という抽象化の道具
  • 思考空間の創造
  • 社会的記憶機能
  • 怪物から天球へ、恐怖から観想へ
  • 現実世界・日常世界とその背景
  • 形式と制約条件
  • 激情と熟慮
  • 演劇的要素が様式形成に与える影響
  • 人間が行う方位・位置確認
  • 芸術と倫理

感覚的に荒々しく禍々しい原初的なものを、変形し再生し、世俗的世界に取り込んでいこうとする様式形成の力学を、古代から中世、ルネサンス期から近代まで、情念定型の表れとしての身振りの受容と変容を追うことで明らかにしようと欲していたアビ・ヴァールブルクの姿勢が読みすすめるごとに感じ取れる一冊であった。

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【目次】
第1章 占星術と古代世界
 東から西へと遍歴する「異邦の天球」の恒星天界図
 惑星像の南から北への遍歴とそのイタリアへの帰還
 ウルリヒ・フォン・ヴィラモヴィッツ = メッレンドルフ宛書簡88
 カール・ラインハルトによるオウィディウスの『変身物語』
 怪物から天球へ
第2章 フィレンツェの美術と文化
 新たに発見されたアンドレア・デル・カスターニョのフレスコ
 フィレンツェのニンフ
 フィレンツェの現実と古代風の理想主義
 ルネサンスの祝祭からのイメージ
 ギルランダイオ工房におけるローマ的古代
第3章 イコノロジー
 美術史学の諸傾向
 ブルクハルト演習最終日
 フィレンツェ美術史研究所開所記念の挨拶
 レンブラントの時代におけるイタリア的古代
 マネの《草上の昼食》
第4章 ハンブルク大学と文化科学図書館
 自治体の責務と公共的精神政治学
 課題は中間にある
 武器庫から実験室へ
 なぜハンブルクは哲学者カッシーラーを失ってはならないのか
 ヴァールブルク文化科学図書館理事会のまえに
第5章 同時代への文化政治学的発言
 アメリカのチャッブ・ブック
 フォルクスハイムでの画像展示会
 ハンブルク市庁舎大広間の壁画
 紋章学の専門蔵書
 ローベルト・ミュンツェル追悼

解題 ヴァールブルクの占星術研究  伊藤博
解題 ヴァールブルクと文化科学図書館  加藤哲弘

あとがき

【付箋箇所】
10, 94, 117, 125, 152, 225, 255, 262, 302, 336, 349, 371

アビ・ヴァールブルク
1866 - 1929

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伊藤博
1955 - 

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加藤哲弘
1953 - 

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ジョルジョ・アガンベン『残りの時 パウロ講義』(原著 2000, 訳:上村忠男 岩波書店 2005)

ベンヤミンショーレムを参照しながらパウロの書簡におけるメシア的なもの・メシア的な時間について考察した短期集中講義録。メシア的な時間とは「過去(完了したもの)が現勢化していまだ完了していないものとなり、現在(いまだ完了していないもの)が一種の完了したかたちを獲得するような星座的な布置関係のうちに二つの時間が入り込む、ひとつの緊張の領域」であると定式化され、その表現のひとつとして韻を持った詩の構造などにも具体例をもって言及しているところなどは、単なる宗教論には終わらない奥行きの深さが感じられる。

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【目次】
第一日 パウロス・ドゥーロス・クリストゥ・イエースゥ 〔パウロ 、 僕=奴隷 、 救世主イエスの〕
第二日 クレートス〔召された〕
第三日 アフォーリスメノス〔分かたれた〕
第四日 アポストロス〔使徒
第五日 エイス・エウアゲリオン・テウ〔神の福音のために〕 一
第六日 エイス・エウアゲリオン・テウ〔神の福音のために〕 二

閾あるいはトルナダ
 
パウロ書簡  ジョルジョ・アガンベン/ 上村忠男

対話 アガンベンの時  上村忠男/大貫隆

【付箋箇所】
7, 9, 13, 18, 38, 48, 56, 65, 90, 120, 128, 138, 158, 162, 167, 171, 181, 214, 292

ジョルジョ・アガンベン
1942 - 

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上村忠男
1941 - 

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大貫隆
1945 - 

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ジョルジョ・アガンベン『幼児期と歴史 経験の破壊と歴史の起源』(原著 2001, 訳:上村忠男 岩波書店 2007)

動物から人間を隔てているものは言語活動ではなく言語活動をもたない状態(インファンティア:タイトルでは幼児期と訳されている)をも持っているところにあるとし、言語活動の主体を構成しつつ行う人間の言語活動の諸相を言語学・哲学・人類学・神学など様々な切り口から論じた論考集。記号論的なものと意味論的なものの差異、ラングとディスクールの分裂を身をもって生きることで経験と歴史を生み出していく人間存在に切り込んでいくシャープな論考。

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【目次】
序 言語活動の経験

インファンティアと歴史
経験の破壊にかんする論考

おもちゃの国
歴史と遊戯にかんする省察

時間と歴史
瞬間と連続の批判

君主とカエル
アドルノベンヤミンにおける方法の問題

おとぎ話と歴史
プレセペにかんする考察

ある雑誌のための綱領

解説――アガンベン読解のための第三の扉 上村忠男
訳者あとがき

【付箋箇所】
4, 9, 12, 20, 21, 28, 30, 41, 61, 70, 71, 91, 98, 105, 121, 125, 142, 155, 159, 165, 168, 177, 183, 184, 222, 239, 254

ジョルジョ・アガンベン
1942 - 

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上村忠男
1941 - 

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