2020-09-01から1ヶ月間の記事一覧
近ごろ気になっている言葉は「内発性」「内的必然性」。ゆるぎない情動にしたがっている人物の濁りのなさと知恵の深さには、たとえ同意するまでにはいたらなくても、心をゆさぶる強さがある。 山口晃『ヘンな日本美術史』。これは前にも触れたことがある日本…
西洋近代哲学の精華の図式的理解に大変有効な一冊。ただ、著者の本当の希望である社会変革(「自由な市民社会」の確立)の起点としての著作となるには、重みにかける。整理はうまいが、人生を動かしてしまうほどの思索の迫力に欠ける。言いたいことだけを言…
題名に神学の文字がはいる二つのテクストはともに言葉をめぐる思索の成果である。「現象学と神学」は学問の言葉について、「「現代の神学における非客観化的思考と言表の問題」に関する神学的討論のための主要な観点に与える若干の指摘」は詩の言葉について…
一九三八年六月九日、もとは「形而上学による近代的世界像の基礎づけ」と題されて行われた講演とそれに付随するハイデッガーによる補遺。近代の偉大さと危うさをめぐる思索が展開されているなかで、大戦前のきな臭いにおい、危機感のようなものも伝わってく…
「アウシュビッツ以後、詩を書くことは野蛮だ」というアドルノの言葉が広まっているにもかかわらず、プリーモ・レーヴィやパウル・ツェランを読んでしまったあとでは、むしろ、「アウシュビッツ以後、詩を書かないですんでいることは野蛮だ」もしくは「詩を…
20世紀にはロシア革命があり、ソビエト社会主義共和国連邦という国があった。マヤコフスキーは革命の熱の中を生き、燃え尽きてしまった詩人。本書で触れることのできる詩の数々は、今はもう冷え切ってしまった社会改革への期待を高らかに歌っている。時代…
モイラは「運命」もしくは「割り当て」で「送り定めながら配分する」はたらきとして提示されている。ギリシア神話では寿命をあやつり決める女神の地位で、時に無常の果実を用いて相手から力を奪うという技も持っているらしい。 運命の最たるものは死で、ハイ…
4連休用に準備した神秘思想関連本、プロティノス、マイスター・エックハルト、スウェーデンボルグ、ルドルフ・シュタイーナー、カンディンスキー、ウィリアム・ブレイク。6人中4人で7割弱程度の達成率。ブレイクは息抜きに中途半端に読むよりも、別途ち…
ワシリー・カンディンスキー(1866 - 1944)はバウハウスでも教官をつとめた理論派の抽象画家。著作『点と線から面へ』は読んだこともあるが(メモ程度の感想ですがこちらです uho360.hatenablog.com )、 シュタイナーもいた神智学協会会員であったとは気が…
善なる一なるものから、いかにして悪が産出されるのか? プロティノスを読み進めていく興味の中心はその一点に尽きた。 【 プロティノス (205 - 270) 収録テキスト11篇】 田中美知太郎 訳 善なるもの一なるもの 三つの原理的なものについて田之頭安彦 訳 …
多くは形式に則った公文書。『神の慰めの書』にくらべればより学問的な内容となっている。『パリ討論集』を頂点に神と存在についての説教・講解を多く集めている。 【収録テキスト】・主の祈り講解・命題集解題講義・一二九四年の復活祭にパリで行われた説教…
今後の人生のよりどころになり得る一冊。エックハルトの神への愛に発する言葉に触れて、信仰のない私のこころも大きく動いた。はじめて聴くような言葉の数々に、世界に接する態度の別の可能性といったものを教えてもらったような気がしている。 エックハルト…
霊界の話。ひとくちに神秘思想といってもいろいろだ。プロティノスの哲学、エックハルトの宗教、そしてシュタイナーの神秘学。一般的に用いられる時の語のニュアンスとはすこし異なるが、シュタイナーが自身の霊学という神秘学の説明をする時にオカルトとい…
130ページまで読んだところで『神の慰めの書』を落として無くしてしまった。高橋和夫の『スウェーデンボルグの思想 科学から神秘世界へ』も無くしているし、、、自業自得。自分の本だったのがまだ救いだ。まだどこかで売っているだろうか。いいところだった…
【 プロティノス (205 - 270) 】 『世界の名著 続2 プロティノス・ポルピュリオス・プロクロス』(中央公論社)からプロティノスの作品 善なるもの一なるもの 三つの原理的なものについて 幸福について まで読みすすめる。 「善なるもの一なるもの」で提示…
前回の4連休(2020.07.23~2020.07.26)の際、柳瀬尚紀訳でジェイムズ・ジョイスの『フィネガンズ・ウェイク』を読んだ。連休のイベントとして、普段であれば読むことが難しいと思うものにチャレンジするということにしておくと、ふんばりがきいてなんとか…
『ロゴス』につづいてヘラクレイトスの断片についての解釈。ヘラクレイトスは暗い人だが、その暗さの中でしか見えてこないほのかな明かりのはたらき(「明るめ」)があるとハイデッガーは説き続ける。 《決して没しないものを前にして、ひとはいかにして自分…
だんねんはせっきょくてきにまえむきにと からげんきでなくしきいつくりかぎるのは らんみゃくなかんけいにときをとられない なんもんにあしをすくわれないぜんのにわ にびいろずきのにひるとされてもかまわぬ だ か ら な に と は い わ ぬ
ヘラクレイトスが活動していた2500年前から、思索の本質は変わらない。だから、「思索は、世界を変革する」といわれても、思ったほどの速さや量では変わらないと思っておいた方がよいだろう。どちらかというと、本質から外れた思惟、『放下』でいわれて…
人間は永遠には生きられない。人間は死すべき存在である。永遠を生きられない悲哀とともにある諧謔が西脇順三郎の詩作のもとにある精神だ。ただ悲哀よりも諧謔のほうが強い傾向は見受けられ、言語表層の艶めきを駆け抜ける姿が浮かんでくる。東洋のヘルメス…
物理学はモデルよりもモデルのもととなる数式、方程式が大事。そのことを明確にしかも興味深く教えてくれるのがファインマン先生、さらによりかみ砕いて肝の食べやすい部分だけをさっと取り出してくれているのが竹内薫。本当は方程式を理解したほうがいいに…
雨はむこうからくる 雲はむこうからくる 晴れはむこうからくる きてくれたことで わたしは待っていたことを知る
ゆするものなくゆれるこころはいつかきっと るすということにしておいてあしたにかえり むいみをそっとようごできるきょりをとって のせるだいをわけてとおらせるのてんしさえ ゆるむの とりてえ
ディキンソンの高潔清廉、フロストの荒涼残酷、サンドバーグのいじらしさ。記憶の引っ掛かりとしてのキャッチフレーズをつけるとしたら、今回はこんな感じになるかなと思った。 本書を読んだきっかけは、ロバート・フロストの詩を日本語訳でたくさん読みたい…
ユダヤ系ドイツ人でカール・マルクスとも交友があった愛と革命の詩人、ハインリヒ・ハイネ。日本語訳からでもほのかに伝わる多彩な詩形式の操り手。『流刑の神々・精霊物語』などの散文から受ける印象にくらべて、詩作品は遥かに軽妙。愛の詩はどうも苦手と…
くうぶんかしたちかいをあらためてもじかすると うっとうしいおもいあがりがはなをついてこまり ふるいおとしてあらたないきにであおうとおもい くだらなさにほほえむじこまんぞくからははなれ さいていのせんをのぞきこみかつえのしんをみるく う ふ く さ …
同一主題の作品を複数並べて紹介してくれているところがありがたい。 マルティン・ルターの肖像:4点ヴィーナス:7点ルクレティア:4点ユディット:5点サロメ:2点 妖艶な姿態に無機質な相貌をもつ妖しい女性象の魅力はもちろんのこと、男性の肖像も、衣装や…
おそらく天使は目を閉じない 閉じる必要がないから そういえば天使は必要ないものばかりでできている だからほんとうは存在しない パウル・クレーがひいた線が かろうじて天使を主張している程度だ
「計算する思惟」と「省察する思惟」「追思する思惟」を区別するハイデッガー。二系統の思惟の違いが本当にあるものかどうかよくわからない。計算の中にはシミュレーションもフィードバックの機構も組み込むことは可能なので、機械的な思考と人間的な思考の…
そうちょうのくうきはひえびえとしてきよく こうしんされたごかんにひめやかによりそう そうぞうにないくうはくをしばしとどめては こういきにむけてしんしんはちいさくひらく のびやかにときひらかれるむいしきとともに そ こ そ こ の く う は く に