読書三昧(仮免) 禹歩の痛痒アーカイブ

乱読中年、中途と半端を生きる

ロバート・フロスト 『フロストの仮面劇』 脳内上演

ロバート・フロスト
フロストの仮面劇
編訳:飯田正志

仮面劇として書かれているが、通常のドラマとしての配役を考えながら読んでみた。

道理の仮面劇 A Masque of Reason (1945).
 神
 ヨブ
 ティアティラ、ヨブの妻
 悪魔(サタン)
 
ヨブ記」から発想された「道理の仮面劇」は喜劇感がとても強そうだ。
直面(ひためん)脳内上演の配役とセリフサンプル


 神:生瀬勝久
  嘲るのはよしにてやれ。彼は憂鬱なのだ。教会では
  無視されるわ、比喩としてやたら使われるわ、すっかり
  しぼんで影みたいになっているのだ
 ヨブ:佐藤二朗
  それで、あれをうまくあしらって頂かないと、
  主はフェミニストではないという疑いを強めるのです。
  主は、女性に対して、悪意を持っておられると思い込むのです。
 ティアティラ、ヨブの妻:キムラ緑子
  ちょっと待って、コダック取ってくるわ。
  そちらのお二人 もうちょっと 近寄ってくださらない?
  だめ ― だめです、それじゃ ニッコリじゃなくてニタリよ。
 悪魔(サタン):小日向文世
  ミルトンが己の盲目についての、自嘲のために
  気づいた方式みたいなことね。

慈愛の仮面劇 A Masque of Mercy (1947).
 ポール、精神分析医(キリスト教宣教者)
 キーパー、書店主
 ジェシー・ベル、キーパーの妻
 ジョーナス・ダブ、逃亡者(ユダヤ預言者
 
 
「ヨナ書」から発想された「慈愛の仮面劇」は少しシリアステイスト。
訳者の解説にはポールにはパウロ、キーパーにはイエスの投影があると指摘されている。
直面(ひためん)脳内上演の配役とセリフサンプル

 ポール、精神分析医(キリスト教宣教者):渡部篤郎
  慈愛は それに値しないものの為にこそあるのです。
  だが神の目から見れば、わたしたちは皆そのようにできている。
 キーパー、書店主:豊川悦司
  高邁な目的という罠に餌を付けるようなもの、
  それからわたしたちが若気を食い千切って
  罠にその残りをおいてくるしか、
  私たちの逃げ道はないのです。
 ジェシー・ベル、キーパーの妻:菅野美穂
  あたしは病んで、ジョーも病んで、世界も病む。
  あたしはお酒を飲もうとする。 ― 少なくも一杯は。 
 ジョーナス・ダブ、逃亡者(ユダヤ預言者):斎藤工
  わたしは内容のない脅迫の運び屋になるのは御免だ。
  主は神様であるだろうが、わたしは一個の人間にすぎない。
  名誉を傷つけられ、大衆の目に曝されるのは耐えられない。

ロバート・フロスト
1874 - 1963
飯田正志
- 2010