読書三昧(仮免) 禹歩の痛痒アーカイブ

乱読中年、中途と半端を生きる

脳内上演

トルクァート・タッソ『愛神の戯れ ――牧歌劇『アミンタ』――』(訳:鷲平京子 岩波文庫 1987, 原著 1573)

困難に向き合うことも多くあった大作『エルサレム解放』の執筆中をぬって書かれた詩人タッソの資質をはばたかせた劇作。これぞ王道というオーソドックスな恋物語。死の際からの生還、愛の行き違いにかかるリスクのとてつもない大きさ、行ったり来たりの展開…

ハインリヒ・フォン・クライスト『ペンテジレーア』(執筆時期 1806/7年, 仲正昌樹訳 論創社 2020) ドゥルーズの誘いにのってクライストの戯曲を読んでみる

戦闘女族アマゾンの女王ペンテジレーアとギリシアの戦士アキレスとの恋と戦闘を描く戯曲。悲劇。 ドゥルーズ+ガタリの『千のプラトー』でクライスト推しが強烈だったので、それならばと誘いにのって、仲正昌樹訳のクライストからクライストの世界に足を踏み…

ポール・クローデルの戯曲『マリヤへのお告げ』(原書1912, 鈴木力衛・山本功訳 1976 )クローデル劇作品の中のひとつのピーク。現代では上演は難しいであろうあやしい果実。

劇的効果に冴えを見せる中世を舞台とした宗教劇。ままならぬ想いに、世界は暗く沈み込むようなすすみゆきを見せるが、苛烈な奇跡と恩寵によって人々の世界は一変する。若い世代の男性二人女性二人の関係性が八年の時間経過の中で鮮やかに描き出される。女性…

ポール・クローデルの戯曲『真昼に分かつ』(原書1906, 鈴木力衛・渡辺守章訳 1960, 1976 )神話的激しさをもつ劇

同時期に起こった作者クローデルの信仰の危機と恋愛の危機を起点として成立した劇作。男性三人女性一人の四角関係、神話的激しさを持ち、刺激は強い。 【脳内上演キャスト】イゼ (ド・シーズの妻): 佐藤江梨子メザ (後にイゼの恋人): 神木隆之介ド・シ…

ギリシア悲劇 オレステイア三部作(アイキュロス)+「エレクトラ」(ソポクレス) 脳内上演

時系列に沿うと以下の順に上演される。 〔脳内上演:名前のあるものに配役を割り振って戯曲を読んでみている〕 1.「アガメムノン」 アイキュロス作 物見の男 合唱隊(コロス) 報せの使い クリュタイメストラ(アルゴスの王妃):小泉今日子 タルテュピオ…

ギリシア悲劇 オイディプス テーバイ王家の悲劇四作(ソポクレス テーバイ三部作+アイキュロス『テーバイ攻めの七将』) 脳内上演

時系列に沿うと以下の順に上演される。キャストは脳内上演用(私的チョイス)。 制約ある人間界での自分の責任の取り方は、自裁という形でしか成就できないのかと心ざわめく感があるが、死者それぞれの最期の姿は記憶に留め置くだけの衝撃がある。 死に向き…

ギルガメッシュ叙事詩+イシュタルの冥界下り

ギルガメッシュ叙事詩+イシュタルの冥界下り訳:矢島文雄 筑摩書房 ギルガメシュ叙事詩 / 矢島 文夫 著 【ギルガメッシュ叙事詩】 ギルガメッシュよ、あなたはどこまでさまよい行くのですあなたの求める生命は見つかることがないでしょう神々が人間を創られ…

呉茂一のホメロス『オデュッセイア』 全二十四書概要と脳内上演キャスト

ホメロス『オデュッセイア』訳:呉茂一 とりあえず通読完了。岩波文庫上下巻。 脳内上演キャスト: アテーネー : 二階堂ふみ ゼウス : 吉田鋼太郎 ヘルメース : 染谷将太 カリュプソー : 戸田恵梨香 テーレマコス : 伊藤健太郎 オデュッセウス : 江口洋介 ペ…

ロバート・フロスト 『フロストの仮面劇』 脳内上演

ロバート・フロストフロストの仮面劇編訳:飯田正志 仮面劇として書かれているが、通常のドラマとしての配役を考えながら読んでみた。 道理の仮面劇 A Masque of Reason (1945). 神 ヨブ ティアティラ、ヨブの妻 悪魔(サタン) 「ヨブ記」から発想された「…

ベケットの劇を読む (ベスト・オブ・ベケット3)

サミュエル・ベケットベスト・オブ・ベケット3しあわせな日々/芝居白水社 (1991/01) 近頃新しい訳者による新しい組み合わせの戯曲集(新訳ベケット戯曲全集1,2)も出ているようですが、手元にあるのは1991年出版の旧版です。キャストをつけて脳内上演を試み…