読書三昧(仮免) 禹歩の痛痒アーカイブ

乱読中年、中途と半端を生きる

高橋睦郎『百枕』(書肆山田 2010)

百枕はももまくらと読む。2007年7月から30ヶ月にわたって俳句雑誌に連載された三百三十三の句作と、枕の字を含んだ語句をめぐって博覧強記から自在に紡がれる縦横無尽なエッセイで構成された書物。
すべての句に枕の文字が入り、エッセイもそれらの句が喚起し連想を呼ぶ古典文芸古典芸能に目配せしながらおおいに遊んでいる様子がうかがえる。韻文散文双方に芸のある人の芸の冴えを味わえる一冊。文芸の世界で遊び興ずるというのはこういうことなのかと感心するばかりであった。「さまざまな枕をめぐるとりどりの風物・風俗・風習を、俳句十七音をもってたどる百なす枕の旅」。

時雨ふる神代も枕交しけり
消えぎはの獏の尾見えつ初枕
生き死にの境朧や波枕

※句作はすべて実際には旧字旧仮名

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【付箋箇所】
41, 64, 95, 111, 122, 123, 131, 133, 136, 155, 176, 187, 188, 190, 191

目次:
籠枕  七月
長枕  八月
邯鄲枕 九月
菊枕  十月
時雨枕 十一月
年の枕 十二月
初枕  一月
立春枕 二月
涅槃枕 三月
春枕  四月
草枕  五月
梅雨枕 六月
枕文字 七月
歌枕  八月
枕詞  九月
枕蟲  十月
枕繪  十一月
枕木  一二月
枕炭  一月
枕神  二月
枕經  三月
枕太刀 四月
枕賣  五月
枕船  六月
枕川  七月
枕占  八月
枕討  九月
枕秋  十月
枕狩  十一月
枕の果て 十二月
後記

高橋睦郎
1937 -