水原紫苑の第三歌集を18年の時を経て新版再刊行したもの。文語での歌作を貫く古典派の歌人。能楽にも造詣が深く、関連する歌は本書にも多く採られている。30代最後の歌集と考えて読むと、若い感覚の歌が多い。作為を感じさせるものも結構あって、とりわけ優れた歌集であるようには思えないというのが正直なところではあるが、妖しい輝きを放つ幾首かの歌があるだけでも良しとして記憶しておくべきなのかもしれない。
夜(よ)の虹のかがやきわたる草のうへ文字(もんじ)に還るうつしみわれは
青年をするどく見つめ去りゆけり多神教なるあぢさゐの精
パンジーをかじりし猫のみるみるに目鼻平たくなりまさりけり
植物を起点とした世界の変容に心つかまれたケースが多かった。
【付箋箇所】
9, 12, 22, 34, 69, 75, 84, 99, 108, 111, 113, 210
水原紫苑
1959 -