読書三昧(仮免) 禹歩の痛痒アーカイブ

乱読中年、中途と半端を生きる

短歌

塚本邦雄『定型幻視論』(人文書院 1972)

塚本邦雄の歌論・短詩系文学論における代表作。1950~1960年代、前衛短歌運動が最も盛んだった時期の当事者による批評的営為。短詩型文学を否定した桑原武夫の『第二芸術』 (1946) へ苦い思いを抱き、口語自由詩の作者であり短詩系文学の理論家でも…

菱川善夫『塚本邦雄の宇宙』Ⅰ・Ⅱ(短歌研究社 2018)

戦後の前衛短歌運動を二十一世紀にいたるまで駆け抜けた塚本邦雄を、短歌批評家としての立場から擁護し共に戦った菱川善夫による批評作品。 塚本邦雄が亡くなった2005年6月9日から二ヵ月余り、同年8月25日に刊行された追悼特集『現代詩手帖特集版 …

俵万智の歌集二冊 『プーさんの鼻』(2005)『未来のサイズ』(2020)

シングルマザーとして出産・育児をする中で詠まれた現代日本の短歌。 俵万智の第四歌集と第六歌集。 同世代の歌人のなかで途切れることなく歌集を出しつづけ、商業的にも失敗していないところはやはりすごい。 根本にある奔放さと冷徹さがすこし浮世離れして…

コレクション日本歌人選019 島内景二『塚本邦雄』(笠間書院 2011)

罌粟枯るるきりぎしのやみ綺語驅つていかなる生を寫さむとせし夢の沖に鶴立ちまよふ ことばとはいのちをおもひ出づるよすが 塚本邦雄主宰の歌誌「玲瓏」が創刊されたのが1986年(昭和61年、チェルノブイリ原発事故があった年)、邦雄66歳、島内景二31歳…

塚本邦雄『緑珠玲瓏館』(文藝春秋 1980)

藤原定家への挑戦の書『新撰小倉百人一首』と同じ年に刊行された著作。 西欧的高踏詩を短歌に移植することに成功し塚本美学のひとつの達成点とされる1965年刊行の第五歌集『緑色研究』から、自選の100首を掲げ、歌それぞれに新たな賛としての幻想増殖…

丸谷才一『新々百人一首』(新潮社 1999, 新潮文庫 2004)

藤原定家の小倉百人一首、源義尚(室町幕府第9代将軍足利義尚)の新百人一首に次ぐ王朝和歌選集。25年の年月をかけて書き継がれて成った新しい百人一首。選歌に付けられた縦横無尽で出し惜しみのない解説文は王朝文芸に関するすぐれた評論にもなっていて…

塚本邦雄『塚本邦雄歌集』(短歌研究社 短歌研究文庫16 1992)

塚本邦雄70歳の時の自選歌集。解説の岡井隆が指摘しているように二十代から一貫して現代短歌の第一線で活躍している塚本邦雄の四十代以降の作品が95%を占める、中年から老年への軌跡を強く感じとれるアンソロジー。全1793首。今回の何度目かになる…

荻原裕幸『リリカル・アンドロイド』(書肆侃侃房 現代歌人シリーズ29 2020)

ニューウェーブ短歌を牽引していた荻原裕幸の第六歌集。前歌集が第五歌集『永遠青天症』を含む全歌集『デジタル・ビスケット』で2001年刊行ということで、本作は19年ぶりの歌集となる。塚本邦雄門下で前衛短歌の影響を受けた歌風で、実作だけでなく歌…

会津八一(1881-1956)『會津八一全歌集』(中央公論社 1986) ひらがな表記と語の分かち書きで伝える近代短歌の特異な詩的表現世界

昭和26年(1951年)の生前全歌集の886首に、拾遺作品264首を新たに付加した一冊(全1150首)。文庫本で手に入りやすい『自註鹿鳴集』よりも歌人の活動期間をより広くカバーしている。活動期間のわりに詠まれた歌の数はそう多くなく、一首一首に推…

西村清和『幽玄とさびの美学 日本的美意識論』(勁草書房 2021)

美学者による幽玄とさびの概念分析。明治以降の西洋近代化の過程で再発見された日本的美についての言説の行きすぎをいさめつつ、個々の作家、作品、評釈を読み直すことで、実際に使用される言葉の用法からおのおのに込められた美意識を拾い、その適用範囲を…

詩人としての安東次男 思潮社現代詩文庫『安東次男詩集』(1970)を読む

現代の日本には少なくとも三種類のpoetがいる。俳人、歌人、現代自由詩人。明治時代までであればこれに漢詩人も加わることになる。複数の専門領域に分けられる日本の詩。すみ分けて、多くの詩人が生息できることには良い面と悪い面があるだろう。その辺の事…

会津八一『自註鹿鳴集』

教養と詩才は単純な相関関係にはない。美術史家、書家として著名であることが歌人としての評価を多分に高めているのではないかというような下衆の勘繰りをめぐらせても詮無いことだが、和歌短歌の業界人ではない読者にとっては、「会津八一の歌」と言われて…

東直子『青卵』(2001, 2019)

誘惑しないセイレーンがひとりつぶやくような歌。ひとたび歌の世界に入ってしまうと、静かなさみしい世界に身動きとれずに置き去りにされてしまうようで、心が弱っているときには少し危険。作者は歌いおえてしまっているが、それに応じることはなかなかむず…

高橋睦郎 句集『荒童鈔』(1977)歌集『道饗』(1978)

ともに現代詩文庫『続・高橋睦郎詩集』に収録されている。 『百人一句』を読んで、著者本人の作品はどのようなものだろうと『荒童鈔』を期待しながら読んだのだが、あまりピンとこない。俳句素人には味わい方がよくわからない作品が多いのだろうと思う。それ…

加藤治郎 噴水塔(歌集)

加藤治郎 噴水塔(歌集) www.hanmoto.com 2015 文芸にかかわる人間としても、本職のシステムエンジニアとしても、大分上の領域にいらっしゃる方だと認識してはいても、著者の作品がどうしても響いてこない。『サニー・サイド・アップ』のころからとりあえず…

穂村弘 短歌の友人

穂村弘短歌の友人 単行本:http://www.kawade.co.jp/np/isbn/9784309018416/ 文庫本:http://www.kawade.co.jp/np/isbn/9784309410654/ 2007(単行本) あらためて短歌のプロなんだなと認識させてくれる批評のコトバの数々。 抜き書きメモ: 短歌という器に…

東郷豊治編著 良寛歌集

良寛歌集東郷豊治編著※『良寛歌集』編、創元社、1963 序より この歌集は、直接、真跡によることを第一とし、博捜して、なお遺墨をさがしえなかった詠歌には、孫引きした署名を掲げ、一首ごとに出拠を明記した。 ※長歌を含む 編者により84の項目に分類され…

穂村弘 『水中翼船炎上中』

穂村弘水中翼船炎上中 bookclub.kodansha.co.jp 「あとがき」より: 私の言葉はまっすぐな時の流れに抗おうとする 短歌5選: カブトムシの角をつかめばかちゃかちゃと森の光をかきまわす脚ブラウン管にぺたっとつけた足の裏 みんみんみんみんみんみん蟬が夕…