読書三昧(仮免) 禹歩の痛痒アーカイブ

乱読中年、中途と半端を生きる

編訳:小笠原豊樹+関根弘『マヤコフスキー選集Ⅲ』(飯塚書店 1958)

決して大衆向けとは思えない長編叙事詩や戯曲を持って数多くソヴィエト各地を回り朗読をしていたという30代のマヤコフスキー。映画やラジオも出てきた時期とはいっても、詩人自身の朗読は魅力的であったのだろうが、聴くだけで本当に分かったのだろうかと思うような複雑さが作品にはあるように思う。聴衆の意識が高かったのだろうか、文芸に向ける期待と要求が厳しいものであったのだろうか、作品内容とともに需要層の態度にも時代の違いを感じさせる。人も、人が作り出す作品も、時と場所によって変化するものであることを改めて考えさせてくれた。

「小父さん、ここで何しているの、小父さんたちこんなに大勢で」
「なんだって? 社会主義だよ。自由にあつまった人たちの自由な労働さ」
(「とてもいい!」より)

「自由にあつまった人たちの自由な労働」を肯定的に謳いあげているところはすごい。ユートピアをつくりあげていく途上を力強く詠っているが、ちょくちょくディストピア的な空気が混じるところが、マヤコフスキーの本来的な芸術家的資質を感じさせもする。


【目次】
詩篇(1927-30) 
ヴラジーミル・イリイツチ・レーニン
御機嫌いかが
とてもいい!
声を限りに・遺稿
風呂
評論・講演(1927-30) 
マヤコフスキーの生涯を俯瞰する

 

【付箋箇所(上下二段組み、上段a,下段b)】
9a, 107b, 108b, 124a, 166a, 202a, 209b, 219a, 225a

 

ヴラジーミル・ヴラジーミロヴィチ・マヤコフスキー
1893 - 1930
小笠原豊樹岩田宏
1932 - 2014
関根弘
1920 -