読書三昧(仮免) 禹歩の痛痒アーカイブ

乱読中年、中途と半端を生きる

柳田国男『不幸なる芸術・笑の本願』(原著 1946, 1953 岩波文庫 1979)

苦しみ多い現実を凌いでいけるように、時に情動を解放してこわばりをほぐし、区切りをつけて新たに向き直るようにしてくれる、笑い、泣き、たくらみの様々な様相と効能を説き、近代以降に衰退してしまったそれらの技芸や習俗となっていた振舞いの再興を願いを込めて書かれた民族芸術エッセイ。古典作品のなかで特に評価されているのは『今昔物語』巻二十八、無住法師の『沙石集』、芭蕉俳諧と能狂言。力弱い者たちがアヤカシや日本的な小さな神々などと触れ合いながら非日常の高揚をくぐりぬけ、ちょっとした宴の場で自らの身体を通して学びつつ浄化されていく様が比較的ゆったりと描き出されている。効率によって追い立てられない、ゆっくりした時間の回復というところにも狙いがあるように感じた。

 

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【目次】
笑の本願
 自序
 笑の文学の起原
 笑の本願
 戯作者の伝統
 吉右会記事
 笑の教育
 女の咲顔
不幸なる芸術
 不幸なる芸術
 ウソと子供
 ウソと文学との関係
 たくらた考
 馬鹿考異説
 嗚滸の文学
 涕泣史談
柳田国男への挨拶(井上ひさし

【付箋箇所】
8, 10, 38, 44, 50, 51, 58, 82, 92, 99, 121, 133, 181, 213, 214, 230, 254, 272, 275, 

柳田国男
1875 - 1962

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