読書三昧(仮免) 禹歩の痛痒アーカイブ

乱読中年、中途と半端を生きる

ジョルジョ・アガンベン『中身のない人間』(原著 1970, 訳:岡田温司+岡部宗吉+多賀健太郎 人文書院 2002)

アガンベン28歳の時の処女作、芸術論。ベンヤミンに多大な影響を受け、驚くべき博識を支えに、潜勢力を重視する独自の思考を組み上げていくアガンベンのはじまりの著作。

芸術家と鑑賞者にともに存在する批評的意識、芸術と芸術に関わる自分自身を解体しつつ新たに創造していく近代以降の異化行為のうちに不安定に宙吊りにされている人間像を「中身のない人間」と名付け、その運命的な状況を様々な角度から検証していく。分裂しながら無限に漂うことになる芸術家と鑑賞家の歩みではあるが、無限につづく逃れようのない運動よりほかのものがあるかといえば、芸術に関してはなさそうであるし、そもそも否定的に考えるほかないものでもなさそうである。

創造-形式原理の超越に直面した芸術家は、みずからの暴力に身をゆだねることで、あらゆる内容の総体的な衰退のなか、この原理を新たな内容として体験しようと求めることができる。そして、自身の分裂をもって根本的な経験となし、この経験から出発してはじめて、人間のある新しい姿が可能になるのである。
(第6章「自己を無にする無」より)

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【目次】
第1章 このうえなく無気味なもの
第2章 フレンホーフェルとその分身
第3章 趣味人と分裂した弁証法
第4章 驚異の部屋
第5章 「詩についての判断は詩よりも価値がある」
第6章 自己を無にする無
第7章 剥奪は顔貌のごとく
第8章 ポイエーシスとプラクシス
第9章 芸術作品の根源的構造
第10章 メランコリーの天使
解説  アガンベンへのもうひとつの扉――詩的なるものと政治的なるもの(岡田温司

【付箋箇所】
10, 20, 27, 35, 38, 42, 52, 56, 60, 68, 70, 79, 81, 82, 85, 91, 102, 107, 110, 112, 124, 127, 151, 154, 158, 230, 233

ジョルジョ・アガンベン
1942 - 

ja.wikipedia.org

岡田温司
1954 - 

ja.wikipedia.org

岡部宗吉
1976 -

多賀健太郎
1974 -