読書三昧(仮免) 禹歩の痛痒アーカイブ

乱読中年、中途と半端を生きる

マンデリシュターム 「対話者について」(1913)

 

パウル・ツェランにも影響を与えた、20世紀ロシア文芸の核を担った感性するどい詩人の代表的評論。詩は誰に向けて書かれるのかという考察。

対話を欠いた抒情詩は存在しない。わたしたちを対話者の抱擁へとおしやる唯一のものは、自分自身の言葉に驚きたい、自分自身の言葉の独創性と意外さにうっとりしたいという願いである。

 もっぱら受け手である100年後の東方のアジアの一文芸愛好家と何かしゃべりたいことがあるかどうか、何か答えたいことがあるかどうか、マンデリシュタームに少し訊いてみたい気がする。驚きの共有と、驚かないことの共有を、語ってすごしてみたい。ディスコミュニケーションに終わるとしても、その時間自体に何事かを語らせたい。


オシップ・マンデリシュターム
1981 - 1938
早川眞理
1932 -