読書三昧(仮免) 禹歩の痛痒アーカイブ

乱読中年、中途と半端を生きる

『自選 大岡信詩集』(2016)

なんの引っかかりもなく読めてしまった。たぶんよい読み方ではなかった。どんな詩人であるのかはっきりわからないところにいる。読み通してからパラパラめくってみたときのほうが言葉のつぶてとして気にかかってくるところがあった。おそらく、紀貫之菅原道真などを論ずる日本の詩歌の批評家としての才能の印象が強すぎて、一詩人としての特徴が十分とらえきれていないのだろう。

地上におれを縛りつける手があるから
おれは空の階段をあがつていける

肩をゆすつて風に抵抗するたびに
おれは空の懐ろへ一段一段深く吸はれる

地上におれを縛りつける手があるから
おれは地球を吊りあげている

(「凧の思想」全)

どちらかといえば、情よりも理知的な側面がつよく感じられる詩が多いように思う。

 

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大岡信
1931 - 2017