読書三昧(仮免) 禹歩の痛痒アーカイブ

乱読中年、中途と半端を生きる

ゲオルク・ビューヒナー『ヴォイツェク ダントンの死 レンツ』(訳:岩淵達治 岩波文庫 2006)

破滅の相を描いた三作。

描かれた暗さと愚かしさの魅惑、誘惑

態度や行動と心理言語の面においてのこだわりとなげやりの共存がよく描き込まれている。

男性主人公の語りが主だが、破滅していく男の傍らにいる女性の姿が短い文章で鮮烈に描かれているところも印象的。

自由思想を掲げた政治運動のため逮捕される恐れがあった21歳のビューヒナーは、国外へ亡命するための資金を得るためにわずか五週間で四幕からなる長篇劇『ダントンの死』を書き上げて、面識のない年長の政治詩人へ作品を送ったという。必ずしも文学志向ではないのに傑作を書き上げてしまう若き天才という者はいるもので、出会ったものは唖然としながら、感嘆享受するほかない。

『レンツ』や『ヴォイツェク』などは未完の作であるにもかかわらず、かなり整った造りとなっていて、メモとして残された断片部分とともに、最初から完成度の高い劇創作の息づかいがよく感じ取れる。

岩淵達治の翻訳がよいためもあってか、200年近く前の作品であっても古臭くなく、現代的な感覚にまっすぐ入ってきてくれる。

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【目次】
レンツ

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ヴォイツェク

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ダントンの死

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【付箋箇所】
79, 96, 114, 130, 178, 203, 218, 235, 242, 359

ゲオルク・ビューヒナー
1813 - 1837

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岩淵達治
1927 - 2013

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