2024-05-01から1ヶ月間の記事一覧
幕末から明治時代にかけて活躍した絵師河鍋暁斎の代表作とその娘暁翠の作品を、暁斎の曾孫である河鍋楠美が家伝来の資料をベースにまとめ上げた一冊。 伝統的美人図と鳥獣戯画の系列を引く日本的幻想世界を近世から近代に揺るぎなく提供した絵師の生涯の作品…
最新の韻文訳。訳注も充実。 とりあえず通読の記録。 本文以外に場面転換部分が示されていないので、本書のみで読む場合には注意が必要になってくる。 現代人が西欧古典の核心部に親しみはじめるきっかけとなる貴重な刊行物。 きっかけがあれば現代東洋人で…
長く出版社に勤め慎ましやかな生活を送りながら独り詩を作り集まって連句を巻いていたところに、40代もおしつまった1993年、小説家の車谷長吉と結婚し共同生活をはじめたことで作風が変わっていくのがよく見える詩選集。小説家の夫が強迫神経症に陥っ…
悪意にも境を接しているような辛辣なまでの知性のはたらきと、そこから生み出されている芸術の際立った生動と過剰さに促されるようにして書かれたヴァレリーのエッセイ。ドガのデッサンの木版画と銅版画による複製51枚とともに、刊行された最初の形態に沿…
世界最高峰といわれる現代ドイツの画家ゲルハルト・リヒターの中年期から刊行直近までのインタビューと初期からのノートを集成した一冊。基本的にずっと厳しく絵画に向き合ってきた作家の生き方に近づける一冊。インタビューを見ると発言自体は年を追いより…
生誕90年、画業60周年記念、現存する世界最高峰の画家ゲルハルト・リヒターの展覧会の公式図録。 写真を素材として使用した具象画と色彩と筆触との組み合わせから構成された抽象画、そしてガラスや鏡を用いた作品、約140点を収録し、研究者によるエッ…
出版社も翻訳者も監修者も哲学専門ではないということもあってか、何だかフワフワ感のあるスピノザ紹介書。翻訳者が違っていればまた違った印象の本になったのではないかという気もするが、原著者スティーヴン・ナドラーはスピノザを専門とする学術者でもあ…
ドゥルーズ『差異と反復』をできるかぎり図式的かつ体系的に描き出すこと目指して書かれた著作。 ドゥルーズを読んだことのない人にもわかるように、ドゥルーズの「先験的経験論」を取り上げて、一般的に考えられている認識の経験とドゥルーズの考える経験が…
ボードレールとランボーとマラルメの詩作を鑑として書かれたボヌフォワの重厚な詩論と芸術論。 エッセイ「ユーモア、投射影」の訳注には「ボヌフォワはランボーの言う「抱き締めるべきざらざらした現実」(『地獄の季節』所収「別れ」)を存在の真理として提…
日本語に翻訳されてもなお失われないバイロンの詩句の疾走感。 詩人シェリーとその文化圏との交友関係のなかから生まれたゴシックロマンスの初期傑作『フランケンシュタイン』『ヴァンパイア』とも精神的に繋がる世界観のなかで生きた詩人の姿を、本人の特徴…
『ドン・ジュアン』(1819年 - 1824年)は作者の死によって中断された未完の大作。物語詩と諷刺詩の混淆様式で、巻を追うごとにリアリティよりも語り手の脱線を含んだよろず語りに比重が置かれるようになる。ワーズワースの詩を崇高一辺倒と馬鹿にしながら自…
生誕140周年の熊谷守一展「わたしはわたし」の公式図録。油彩画・日本画・書から201点を掲載。97歳まで描きつづけた熊谷がクマガイ様式やモリカズ様式と呼ばれる独自の作風構築に向かったのは50代も終盤にかかってからのこと。生活にも困窮してい…
破滅の相を描いた三作。 描かれた暗さと愚かしさの魅惑、誘惑 態度や行動と心理言語の面においてのこだわりとなげやりの共存がよく描き込まれている。 男性主人公の語りが主だが、破滅していく男の傍らにいる女性の姿が短い文章で鮮烈に描かれているところも…