読書三昧(仮免) 禹歩の痛痒アーカイブ

乱読中年、中途と半端を生きる

ペトラルカ『凱旋』(池田廉訳 名古屋大学出版会 2004)

ルネサンス期にはラウラへの愛を歌いあげた『カンツォニエーレ 俗事詩片』よりもよく読まれたペトラルカの『凱旋』。ダンテの『神曲』からの影響も感じられる凱旋パレードを模した人物総覧の凱歌。人物名、固有名が列挙される「愛の凱旋」「貞潔の凱旋」「名声の凱旋」よりもベアトリーチェ化したラウラとペトラルカの対話「死の凱旋」や『わが秘密』を想起させる「時の凱旋」「永遠の凱旋」のほうが面白味を感じやすいが、ルネサンス期に読まれた理由としての人物カタログ的なところを十分に味わえる素養がある場合にはまた感想も異なってくるのだろう。「旧稿」側ではあるがソクラテスの記述など、くきやかで、颯爽としていて、とても印象的である。

次に目にしたのは、哲学の父。
陽気で誠実なご老人ソクラテスを。
 彼、哲学を、旧(もと)の住居(すまい)の天空から
引き降ろして、現身の地上に移り住まわせて、
人の生き方に役立てようとした人。
(旧稿「名声の凱旋」Ⅲより)

『凱旋』は1352年から創作がはじまり亡くなる五カ月前まで手を入れ完成に導いた作品。本訳書にはペトラルカの『凱旋』に関係するイタリア美術の図版が20点ほど添えられていて、作品の理解を助けてくれるとともに、作品の彩りと優美さ威容さをより引き立たせてくれている。

www.unp.or.jp

【付箋箇所】
74, 81, 122, 90, 186, 205, 214, 218, 250, 285, 

目次:

愛の凱旋
貞潔の凱旋
死の凱旋
名声の凱旋
時の凱旋
永遠の凱旋

[旧稿]
死の凱旋
名声の凱旋

解説 ペトラルカの夢
訳者あとがき


フランチェスコ・ペトラルカ
1304 - 1374
池田廉
1928 -