読書三昧(仮免) 禹歩の痛痒アーカイブ

乱読中年、中途と半端を生きる

小松茂美『国宝 平家納経 全三十三巻の美と謎』(2005, 2012)

『図説 平家納経』(2005)の新装版。
各巻の表紙、見返し、軸を図版として紹介してくれている。軸の豪華さも味わえて平家納経にまた別の角度から接することができた。本書を手に取った目的は俵屋宗達が手掛けた江戸の補修作業(1602)について詳しい情報が得られるのではないかと期待したからだが、それについては特に新しい情報というほどのものはなかった(化城喩品表紙と願文見返し(鹿図)が宗達の手になることが示されているのみ)。それよりも初めて知った昭和大修理(1956-58)の際の安田靫彦の薬草喩品の表紙と見返しの新装が、ほかの巻と色調も画風も浮いてしまっていることに驚いた。宗達の絵にはあまりそういう違和感は感じなかったが、近代の日本画家のあらたな作家性を出すこと意味があったのだろうかと、ふと思ってしまった。修理修復するというのは難しい事業なのだなと感じた一冊。

全三十三巻の美と謎 国宝平家納経 歴史、城郭、神道など書籍の出版・販売|戎光祥出版株式会社

小松茂美
1925 - 2010
安田靫彦
1884 - 1978