読書三昧(仮免) 禹歩の痛痒アーカイブ

乱読中年、中途と半端を生きる

仏教

筒井紘一『利休聞き書き 「南方録 覚書」全訳注』( 講談社学術文庫 2016, 講談社『すらすら読める南方録』2003 )時を得たもてなしの心と技

モンテーニュ(1533 - 1592)の『エセー』をつまみ食いしているなか、日本の同時代人が気になったので、千利休(1522 - 1591)の語録系の著作を読んでみた。現代から遠く離れた時代の生活感を感じるとともに、茶道などの知らない分野について書かれた古典的…

頼住光子『正法眼蔵入門』(角川ソフィア文庫 2014)分節化した世界からの「脱落と現成」

2005年にNHK出版から刊行され、いまは絶版となってしまっている『道元 自己・時間・世界はどのように成立するのか』の増補改訂版の著作。全128ページの論考が231ページまで分量的にはほぼ倍増され、研究の深まり、論旨の繊細さもずいぶん増したように感じ…

清沢満之(1863-1903)の原稿原文と今村仁司の現代語訳比較サンプル

明治期の清沢満之の文章は今現在でも読めないということはない。特殊用語の注釈が入ってくれていれば特に問題なく読めることは読める。書き手の息遣いのようなものも原文のほうが色濃く感じることもできる。ただ、現代語訳にしてもらえるなら意味内容はとら…

文庫で読む清沢満之(きよざわまんし 1863-1903) 読書資料

清沢満之は真宗大谷派の僧侶。法然、親鸞、蓮如に連なる他力の信仰者。東京大学でフェノロサからヘーゲルやスペンサーを学んだことで、自身の仏教哲学に西洋哲学を取り込んでいる。有限と無限の考察、遍満する仏を説く汎神論、世界理解に対する数学的アプロ…

岩波日本古典文学大系89『五山文學集 江戸漢詩集』(岩波書店 1966 山岸徳平校注)から五山文学の漢詩を読む

五山文学は鎌倉室町期の臨済宗の僧侶たちの手による漢詩の作品。読み下し文をたよりに単に読み通すだけだと、パターン化された憂愁を詠った作品が多くて、悟った僧たちのくせに何をやってるのだろうと感じたりもするのだが、作品を書いた意図としては無聊の…

頼住光子『道元の思想  大乗仏教の真髄を読み解く』(NHKブックス 2011)一切衆生悉有仏性というのに修行が必要なのはなぜか?

修行というのは固着しないほうがよいものを固着させないように揉みほぐすようにする日々の運動、「全体世界」としての仏の場を開示しつづける終りない営みであるということを説いているのが本書の肝ではないかと思う。 道元は「悉有仏性」を「悉有は仏性であ…

相馬御風『大愚良寛』(1918, 考古堂 渡辺秀英校注 1974)良寛愛あふれる評伝

良寛のはじめての全集が出たのが1918年(大正7年)であるから、まだまとまった資料がない時期に、良寛の史跡を訪ね、ゆかりの地に伝わる逸話を地元の人々から直接聞き取り、良寛の遺墨に出会いながら、人々に愛された良寛の生涯をつづる。明治期から昭和期に…

唐木順三『良寛』(筑摩書房 1971, ちくま文庫 1985)天真爛漫と屈折の同居。漢詩の読み解きを中心に描かれる良寛像

良寛は道元にはじまる曹洞宗の禅僧で、師の十世大忍国仙和尚から印可を受けているので、悟りを開いていることになっているはずなのだが、実際のところ、放浪隠遁の日々を送っているその姿は、パトロンから見ても本人的にも失敗した僧と位置付けるのが正しい…

井上宏生『<ビジュアル選書> 一遍 遊行に生きた漂泊の僧 熊野・鎌倉・京都』(新人物往来社 2010)決定往生の安心を説き与えつづけた遊行の僧

唐木順三が著書『無常』において高く評価していた一遍が気になり、入門書を手に取る。いずれも「捨てる」ことを説いた鎌倉新仏教の開祖のうち、寺を持たず、捨てようとする心も捨てるにいたったという一遍が、捨てるということにおいてはもっとも徹底してい…

唐木順三『無常』(筑摩叢書 1965 ちくま学芸文庫 1998)日本的詩の世界の探究

赤子の世界、無垢なる世界は、美しいが恐ろしい。穢れ曇ったものが触れると、穢れや曇りが際立ってしまう。そして、在家の世界で赤子のままでずっといられる万人向けの方法など探してみても、どうにもなさそうなので、せめて先人の行為の跡に触れようと、と…

門屋秀一『美術で綴るキリスト教と仏教 有の西欧と無の日本』(晃洋書房 2016)キリスト教の宗教画と日本の禅画を比較しながら最終的には西田幾多郎の哲学の核心にせまろうとする著作

美術の棚にあったけれど、著者自身があとがきで書いているように宗教学の本。出版社のサイトにもジャンルは哲学・宗教学と書いてあったので、美術の歴史や技巧や洋の東西の美術的な差異などについての記述を期待していると裏切られる。宗教画や禅画の図版は…

山内得立『随眠の哲学』(岩波書店 1993, オンデマンド版 2014)レンマ学の始祖、最後の著作。排中律の超克を志向する。

ずいめんのてつがく、随眠とは煩悩のこと。 拙著『ロゴスとレンマ』に於いて展開したように、東洋的無は決してロゴスの立場に立つものではない。それはロゴス的に肯定に対する否定ではなく、肯定を否定するとともに、否定を否定するものであった。それは肯定…

鎌田茂雄『華厳の思想』( 講談社 1982, 講談社学術文庫 1988)正統が示す華厳思想の守備範囲

現代的な東洋思想に対する期待に対して、東洋哲学正統からの一般的見解として、大乗仏教の守備範囲を明示してくれるありがたい一冊。入門書とはいえ、学問的境界に対する感度は極めて敏感であると感じた。基本的に著者鎌田茂雄は科学との容易な連合には否定…

鎌田茂雄 編著『和訳 華厳経』( 東京美術 1995 )中沢新一がレンマ学のベースに据えたいと考えている『華厳経』原典を少しかじる

華厳経の総ルビ付き抄訳。原典の雰囲気を現代語訳で感じ取れる一冊。しっかり読みたい向きには物足りないかも。 【解説より】 『華厳経』の性起という、あらゆるものが仏性に光り照らされているという考え方は、中国人の古来からの自然観である万物一体観と…

中沢新一『レンマ学』(講談社 2019)とりあえず、この先五年の展開が愉しみ

中沢新一、七〇歳のレンマ学言挙げ。あと十年ぐらいは裾野を拡げる活動と頂を磨き上げる活動に注力していただきたい。難しそうな道なので陰ながら応援!!! 横道に逸れたら、それも中沢新一。私とは明瞭に違った人生を生きている稀有な人物。変わった人なの…

佐藤優『「日本」論 東西の”革命児”から考える』(角川書店 2018) 此岸指向 革命を控えるというラディカリズム

スクラップアンドビルドではなくストック活用。新規開発よりも修繕メンテナンス。革新というよりは保守。ユートピアに一挙に飛ばずに目の前のゴミを拾いながら歩いて進む。指摘されなければ知らないルターと日蓮の共通性を学ぶ。 時空を経て、お互いにはコミ…

竹村牧男『空海の哲学』(2020, 講談社現代新書)

唯識思想や華厳思想が専門の著者が宗門を超えて空海の「即身成仏」をマテリアリスティックに読み解くしびれる一冊。 この環境世界も仏国土そのものであるのが実情なのである。じつに「草木国土、悉皆成仏」である。この句の意味は、「草木国土も悉皆、未来に…

空海『即身成仏義』(加藤精一編 角川ソフィア文庫 ビギナーズ日本の思想 2013)

空海の思想の中心はやはり即身成仏。詳細な解説書を読む前に、原文読み下し文と簡易解説に触れておくほうが良いと思うので、角川ソフィア文庫のビギナーズ日本の思想シリーズを手にされることをすすめる。 【即身成仏の頌】六大無礙にして常に瑜伽(ゆが)な…

遠山義孝『人と思想 77 ショーペンハウアー』(清水書院 1986)

ショーペンハウアーと東洋思想という切り口での紹介の比率が大きい入門書。日本の読者向けの特殊な配分だと思う。ヴェーダや仏教とショーペンハウアーの思想との関係からはそれほど豊かな実りは得られないのではないかと私は思っている。個人的には西洋哲学…

カール・ヤスパース『佛陀と龍樹』(原書1957, 訳書1960) 理想社 ヤスパース選集5

アジアの救済宗教の言葉を、ヨーロッパの形而上学とは異なり、自分の立場とは異なると認めたうえで、《へだたり》の認識を保ちつつ、なお「力のかぎりこれを理解する」と言葉を紡ぐヤスパース。その存在は、大きい。 【佛陀】 信仰者にとって、生の倦怠は生…

レナード・コーレン『Wabi-Sabi わびさびを読み解く for Artists, Designers, Poets & Philosophers 』(1994, 2014)

稲越功一の木の写真についてのキャプション。自然を切りとるフレームに対する感性という指摘。 わびさびは、単にある一定の特徴を備えた手つかずの自然のことではない。人は、それに際立った文脈を与え、それを少なくとも「フレームに入れる・構成する」取り…

高村薫『空海』(2015)

高村薫が空海を取材する必然性があまりよく分からない一冊。密教の身体感覚というところで空海に結び付くのだろうけれど、空海自身の思想が立ち上がってくるわけではなく、行者の一傾向がクローズアップされているような印象があった。 寶壽院は典型的な祈祷…

小松茂美『国宝 平家納経 全三十三巻の美と謎』(2005, 2012)

『図説 平家納経』(2005)の新装版。各巻の表紙、見返し、軸を図版として紹介してくれている。軸の豪華さも味わえて平家納経にまた別の角度から接することができた。本書を手に取った目的は俵屋宗達が手掛けた江戸の補修作業(1602)について詳しい情報が得ら…

頼住光子『道元 自己・時間・世界はどのように成立するのか』(2005)

井筒俊彦『コスモスとアンチコスモス』で道元への言及があったので、道元についての情報を補強しようと思って読んでみたが、井筒俊彦だけで十分かもしれないと思った。100ページ程度の著作なので、まあ、欲をかいてはいけない。 通常の認識においては、認…

井筒俊彦『コスモスとアンチコスモス 東洋哲学のために』(1989, 2019)

柄谷行人も似たようなことを最近の著作のどこかで言っていたような記憶があるが、世界共通言語としての「メタ・ランゲージ」が必要だという発言が一番大きなテーマとして響いた。 メタ・ランゲージというものがどうしてもできなくては、さきほどの国際社会の…

佐藤優『世界宗教の条件とは何か』(2019)

2017年9月から12月にかけて創価大学にて行われた課外連続講座を書籍化。 キリスト教においては、苦難に耐えることと希望がセットになっています。「希望を持つ人は、苦難を克服することができる。また、現実の苦難を耐えることが将来の救いにつながる」とい…

白洲正子『十一面観音巡礼 愛蔵版』(1975, 2010)

白洲正子は現代の文化的野蛮人たる私にも日本の別世界をすこし見せてくれる貴重な案内者である。 両眼をよせ気味に、一点を凝視する表情には、多分に呪術的な暗さがあり、まったく動きのない姿は窟屈な感じさえする。平安初期の精神とは、正しくこういうもの…

山崎昇『人と思想149 良寛』(1997 清水書院)

清水書院の「人と思想」シリーズで詩人が対象となる場合、伝記に実作品がふんだんに取り入れられて、優れたアンソロジーを読んだ気分にさせてくれる。本書の場合も漢詩、俳句、和歌の区別なく取り入れられていて、さらには書の図版も多く、良寛の全体像が見…

前野隆司 『「死ぬのが怖い」とはどういうことか』(2013)

受動意識仮説を人文的・哲学的に展開した著作。中島道義や永井均への批判的な言説も入っている。個人的にはロボットについてや科学的な知見をより多めにしていただいたほうが興奮できたと思う。「幸福を得たければ、達人を目指せ」(p226)というのは、そう…

前野隆司 『錯覚する脳 ─「おいしい」も「痛い」も幻想だった』(2007)

受動意識仮説について二冊目の本。意識がイリュージョンであり、視覚情報が脳の生成物であることを強調した著作。最後は仏教の「空」に科学の知見から近づいていっている。 付箋箇所:30, 46, 57, 69, 88, 103, 130, 134, 201, 214, 215 目の誕生以前の世界…