読書三昧(仮免) 禹歩の痛痒アーカイブ

乱読中年、中途と半端を生きる

仏教

吉本隆明『親鸞 決定版』(春秋社 1999)

信と信の崩壊、知と知の崩壊を思考しつづけた親鸞の核心に迫る吉本隆明。傑作だろう。ただ、信という形でしか思考できなかった時代の親鸞の思考を現代と直接結びつけて参考とすることはかなり難しいのではないかと思う。絶対他力のベースに阿弥陀信仰がある…

『鈴木大拙全集 第1巻 増補新版』(編:久松真一+山口益+古田紹欽,岩波書店 2000)

鈴木大拙が妙好人とともに生涯にわたって深い関心を寄せていた盤珪に関しての主要論考二篇。 「盤珪の不生禅」は昭和14(1939)年の刊行。盤珪の不生禅をより現代的により哲学的に捉えて読者に提供している。 笑うことが人間のみに許されて、動物にも天人に…

玉城康四郎『禅入門 9 盤珪 -法語・説法-』(講談社 1994)

不生不滅の不生の語ひとつで禅仏教をひろく民衆層にまで説いた不生禅の盤珪和尚の法語・説法録。公案や経典を用いることはほとんどなく、当時の日常的な言語で仏教の核心を説いているところは驚きであり、またたいへん有難いことでもある。 元来妄想は、実体…

永井均『哲おじさんと学くん-世の中では隠されているいちばん大切なことについて』(岩波現代文庫 2021)

世界を拓く私の存在の不思議さにロジカルに厳密に迫ろうとする平易な言葉で書かれた哲学対話篇。哲学者の哲おじさんと悩める学生学くんと禅者の悟じいさんが登場する。学くんは哲おじさんの話をきわめてよく理解する存在であるにもかかわらず、最終的には真…

西片擔雪『碧巌録提唱』全三冊(岡本明日香塾 2009)

稲盛和夫などを弟子に持った第31代臨済宗妙心寺派管長西片擔雪による10年におよぶ『碧巌録』の提唱(講義)をまとめたもの。岡本株式会社というところの法人設立60周年記念の出版物で、非売品。図書館には結構置いてあるようで文化事業としてかなり力…

編:末木文美士、訳:『碧巌録』研究会『現代語訳 碧巌録』全三冊(岩波書店 2001-2003)

「碧巌録」を読もうと思い岩波文庫の『碧巌録』を購入してみたものの早々に断念。読み下し文と訳注だけではハードルは高かった。ひとまず通読するには現代語訳が必要と、本書に助けを求めた。 構成は、原文、現代語訳、訳注。 解説書の類を読んでも禅の公案…

藤田一照+永井均+山下良道『〈仏教3.0〉を哲学する』(春秋社 2016)『〈仏教3.0〉を哲学する   バージョン2』(春秋社 2020)

仏教を現代人に向けて有用で開かれた形にするよう改革運動を展開している二人の曹洞宗出自の禅僧の発信に、実践的にも理論的にも禅に関心を持つ現代哲学者が、論理的に明確に分析回答するという方向性で展開している鼎談集。禅の説く世界観と言説の方向性を…

秋月龍珉『信心銘・証道歌-禅宗四部録下(禅宗古典選 2)』(春秋社 1991)

禅宗の基本的な文献「禅宗四部録」のうちの二篇についての提唱録。「信心銘」は6世紀中国禅宗三祖僧璨の作、「証道歌」は六祖慧能の直弟子7世紀から8世紀初頭にかけての僧永嘉玄覚の作とされる。経典の内容は基本的に抽象的なので、教えてくれる人があれ…

平田精耕『一切は空 般若心経・金剛般若経』(集英社 1983)

平易な語り口だけれども、般若心経・金剛般若経の核心部分をしっかり押さえて教えてくれるところが親切な、講演ベースの著作。 相対的な世界での苦楽の変転と繰り返しを風流と呼んでいるところなどに人柄が現われている。 ほかに、口絵のひとつとして空海筆…

藤田一照+山下良道『アップデートする仏教』(幻冬舎新書 2013)

現代の曹洞宗系の禅僧の対談本。 個人の問題解決に実践的に関わることがなくなっていってしまった伝統的仏教を「仏教1.0」、テーラワーダ系の瞑想メソッドやマインドフルネスの手法を説いて人生の活性化に積極的なを「仏教2.0」とし、それでも根本解決には届…

久松真一『東洋的無』(原著 1939, 講談社学術文庫 1987)

禅仏教の実践と悟りの見地から、主客を超越し絶対的に一なるものに合一し、自我分別のとらわれを捨てたところに出現してくる東洋的無の世界を、プロティノスやエックハルトなどの西洋神秘主義思想と関連づけたり、禅の美術との関連で語ったりするところの論…

平田精耕『禅語事典 より良き人生への二百五十のことば』(PHP研究所 1988)

基本的に見開きの二頁に「解説」と「寸話」という構成で禅語を紹介していく著作。著者の悟りの経験をベースにして、やわらかい語り口で禅の教えを説いている。禅の本質でもある人それぞれの資質にあった道に導くことに意を用いた教育的な書物。勉強にも仕事…

秋月龍珉『公案 実践的禅入門』(原著 1965, ちくま学芸文庫 2009)

入門とありながら、参禅の初歩から禅仏教界批判まで広汎に説かれた濃密な一冊。禅僧であり禅学者である著者秋月龍珉のはじめての著作ということもあって意気込みは圧倒的。密室で行われる師弟問答の様子や指導に使われている臨済宗の公案体系を公開するなど…

平田精耕『無門関を読む』全三冊(柏樹社 1982)

道場の師家であり仏教系大学の教授でもある著者平田精耕による5年間にわたる「無門関」48則の講演をまとめた著作。一般大衆向けの開かれた講演であるからか、穏やかな語り口で禅の要諦を淡々と語り伝えてくれているところが追いていきやすい。 禅の公案は…

訓読・現代文訳・解読:石井恭二 一休宗純『一休和尚大全』上下巻(河出書房新社 2008)

禅の公案集の解説書を読んでいるうちに、名前の出てこない一休のことが気になりだして手に取った著作。 禅の世界では拈弄という批評の方法があって、自分の工夫を端的に付け加えることに重きを置くがゆえに先人を評価しているのだが敢えて批判的言辞を弄する…

安谷白雲『禅の心髄 無門関』(春秋社 1965)

「無門関」は中国宋代臨済宗楊岐派の禅僧無門慧開(1183-1260)によって著された公案集。全48則。 岩波文庫の『無門関』や講談社学術文庫から出ている秋月龍珉『無門関を読む』では歯が立たなかったので、より解説が充実したものを求めて手に取った一冊。 本…

上田閑照『十牛図を歩む 真の自己への道』(大法輪閣 2002)

結構重厚。 1970-71年におけるドイツのマールブルク大学での十牛図に関する講義をベースに、以後30年の経験を踏まえて新たに説き直した十牛図解説本。 中心となる「十牛図を歩む」は、中国北宋時代の廓庵禅師の図と頌と弟子慈遠の序を丁寧にたどりながら、禅…

臨済宗円覚寺派管長 横田南嶺『十牛図に学ぶ 真の自己を尋ねて』(致知出版社 2020)

平成30年(2018年)に致知出版社主催の経営リーダーを対象として行われた講義を書籍化したもの。著者は昭和39年生まれの臨済宗円覚寺派管長横田南嶺。54歳の時の講演だから、結構若い。 十牛図は、苦闘しながら悟りを得るまでの内面中心の過程と、悟りを…

竹村牧男『『正法眼蔵』講義 仏性』上下巻(大法輪閣 2007)

いまも月一で開催されている東京愛宕の青松寺主催の『正法眼蔵』講義を書籍化したもの。『正法眼蔵』の中ではかなり長い「仏性」巻の講義。「仏性」の巻は、「一切衆生悉有仏性」を「すべての衆生は仏性を有する」と解するのではなく、「悉有(万有)が仏性…

石井恭二『現代文正法眼蔵』全6巻(河出書房新社 1999-2000)

石井恭二による道元の正法眼蔵の現代語訳。巻末にまとめられた簡単な注以外は本文の現代語訳のみという最低限の構成ではあるが、とりあえず全巻通読して全容を感覚的に知りたいという私のような読者にとっては、ぴったりの著作。一冊250ページ前後で、順…

鈴木大拙『金剛経の禅・禅への道』(春秋社 2020)

分かるものには分かる、分らぬものには分からない、という姿勢で書かれているのだが、あまり反発を感じることもなく読める、鈴木大拙が語る禅の分別知を超えた世界。禅は「人格」を見ることにおいて成就すると説かれているので、分らぬものに対しても著者の…

石井恭二『正法眼蔵の世界』(河出書房新社 2001)

原文対訳『正法眼蔵』全5冊と現代文訳『正法眼蔵』全6冊の仕事のあとに書かれた道元『正法眼蔵』紹介の書。基本的に原文と訳文を併記した各種引用の組み合わせで構成されていて、道元自身の言葉でおおよその思考と体験の形を見て取ることができる。 訳文は…

松本章男『道元の和歌  春は花夏ほととぎす』(中公新書 2005)

道元は鎌倉初期の仏僧で、当時盛んだった和歌の世界は表現の本領ではなく、『正法眼蔵』や『永平広録』などの教学と比べれば、道元の歌そのものの価値はあまり高くはないし、同時代の仏僧の勅撰和歌集収録歌数を比べてみても、道元の和歌は魅力に乏しいこと…

井筒俊彦『禅仏教の哲学に向けて』(原著 1977, 訳:野平宗弘 ぷねうま舎 20104)

禅問答における師の回答は修辞疑問である場合が多いという見解が一番印象に残った。 分別知を超えた自他未分主客未分の境位ではたらくのが悟りの智慧であることを、論理的に丁寧に豊富に語っているところが本書の特徴であろう。 世界の知識人たちを相手に、…

訓読・注釈・現代文訳:石井恭二 道元『永平広録』全三冊(河出書房新社 2005)

道元は享年54で、今年になって道元よりも長く生きているということに気がついた。ということで前から気になっていた『正法眼蔵』に取り組もうかと考えていたのだが、何しろ敷居が高そうなので、まずは説法を集めた『永平広録』から読んでみることにした。…

竹村牧男『道元の〈哲学〉  -脱落即現成の世界-』(春秋社 2022)

仏教の悟りに関しては、世俗にも強制する階級的な指標でありながら、仏教内での言語ゲームを受け入れた人にしか通用しないし認められもしない属人的境位というイメージを持っているのだが、「全機現」という概念にも現われている人がもっている全ての機能を…

吉本隆明『良寛』(春秋社 1992, 2004)

批評家吉本隆明の著作の中でもひときわ完成度の高い思考の軌跡をたどることのできる一作ではないかと思う。突出した読み手として在ることと、読むことによって更新された表現の世界(対象)が同時に立ち上がってくるような感覚を味わうことができる読書経験…

釈徹宗『天才富永仲基 独創の町人学者』(新潮新書 2020)

富永仲基の方法論「加上」「異部名字難必和会」「三物五類」(張・泛・磯・反・天)「国有俗」「誠の道」を、主に『出定後語』を読み解きながら解説している良書。31歳で夭折してしまった仲基の早熟と天才的分析力がすっきりストレートに伝わってくるしっ…

続々日本絵巻大成 伝記・縁起篇1『善信聖人親鸞伝絵』(小松茂美編 中央公論社社 1994)

『善信聖人親鸞伝絵』は親鸞の曽孫にあたる覚如が、親鸞没後33年の1295年に自ら詞書を染筆し完成させた伝記絵巻。絵師は不明だが、絵からはしっかりした技量が伝わってくる。寺社の室内での場面が多く、比較的動きの少ない絵巻だが、描かれている人物…

鈴木貞美『鴨長明 ――自由のこころ』(ちくま新書 2016)

最新の研究を参照しながら新たな鴨長明像を提示しようとした野心的な著作。新書であるにもかかわらず研究書あるいは批判的な考察の多い批評といった印象が強く、鴨長明をある程度読んでいない人にとってはとっつきにくい作品であると思う。少なくとも鴨長明…