日本画
神獣と吉祥を象徴する動物たちをモチーフにした日本画と工芸品を多数紹介してくれる一冊。日本語英語併記のバイリンガル本(英題はAuspicious Animals - The Art of Good Omens)。めでたい動物たちと日本の職人たちの優れた技術を見ることで気分がなんとな…
市場にはほとんど出回っていない書籍。興味があったら図書館で借りて観て、という一冊。 明治期の日本画と洋画の激動と受容を、傍観者的立場でも微かに通覧し、追体験することができる資料的価値の高い書籍。 日本画と洋画があることで生じた苦悩と豊饒。混…
高畑勲は言わずと知れた日本のアニメータ。私は彼の手掛けたテレビアニメを再放送で見た世代。『アルプスの少女ハイジ』『フランダースの犬』『母をたずねて三千里』など。個人的にいちばん高畑勲っぽいなと感じるのは『じゃりン子チエ』か。映画だと『ホー…
書店(BOOKOFFだけど)で手に取って棚に戻さなかったのは、図版のたたずまいがキリっとしていてチョイスもどことなく変わっていたため。表紙も横尾忠則デザインで只者ではなさそうな雰囲気はあったが、橋本治の『ひらがな日本美術史』にも通じるところのある…
抵抗者という視点から中井正一を語った一冊。理論的な骨格を描き出した「委員会の論理」(1936)とそれを広範に向けて拡張展開した「美学入門」(1951)を中心に中井の弁証法的唯物論を核に据えた論考を読み解いている。 中井正一が『美学入門』のなかで展開…
唐木順三が著書『無常』において高く評価していた一遍が気になり、入門書を手に取る。いずれも「捨てる」ことを説いた鎌倉新仏教の開祖のうち、寺を持たず、捨てようとする心も捨てるにいたったという一遍が、捨てるということにおいてはもっとも徹底してい…
クマガイモリカズ、明治十三 1880 ─ 昭和五十二 1977。「海の幸」の明治の日本洋画家である青木繁の二歳年長で、東京美術学校では同級で親友でもあったが、熊谷守一の方は戦後の作家という印象が強い。全168ページに多数の図版が収録されているが、その多…
2013年の『モチーフで読む美術史』につづく文庫版オリジナル著作第二弾。あらたに50のモチーフから美術作品を読み解いていく、小さいながらも情報量の多い作品。 著者である宮下規久朗は、前作『モチーフで読む美術史』の校了日に一人娘を22歳の若さ…
美術の棚にあったけれど、著者自身があとがきで書いているように宗教学の本。出版社のサイトにもジャンルは哲学・宗教学と書いてあったので、美術の歴史や技巧や洋の東西の美術的な差異などについての記述を期待していると裏切られる。宗教画や禅画の図版は…
見開き2ページのコラムにカラー図版2ページの体裁で、66の絵画モチーフについて取り上げた美術書。1000円を切った価格で、ほぼすべての図版がカラーというのはとても贅沢。コラムには絵画モチーフについての基本的な情報と、モチーフにまつわる雑学…
素朴な画家と勝手に思い込んでいた熊谷守一が、同業者からは一目置かれる理論派で当時の最先端美術にも通じ、なおかつ海外の代表的な作家の作品にも通底し且つ質において匹敵するする作品を晩年まで作成し続けていたという指摘に、目を洗われる思いがした。…
2015年春、水戸芸術館現代美術ギャラリーで開催された個展の公式カタログ兼書籍。 タイトルは日本語のほうが含みがあってよい。他の作品のタイトルには旧字が使われていたりするので、バイリンガルの書籍という体裁をもつ本作品にあっては、翻訳の問題な…
かわなべきょうさい(1831 - 1889)技術にも発想にも優れた画人。 先日読んだ山口晃の『ヘンな日本美術史』(祥伝社 2012)のなかの「やがてかなしき明治画壇」の章でとりあげられていたので、不遇の人、屈折をもってしまった人かなと予想していたところ、ま…
近ごろ気になっている言葉は「内発性」「内的必然性」。ゆるぎない情動にしたがっている人物の濁りのなさと知恵の深さには、たとえ同意するまでにはいたらなくても、心をゆさぶる強さがある。 山口晃『ヘンな日本美術史』。これは前にも触れたことがある日本…
「泰東巧藝史」は岡倉天心が明治四十三年に東京帝国大学で行った講義の講義録。岡倉天心最後の体系的な美術史の取り組みとなった。諸外国に向けて「アジアは一つ」と発した岡倉天心の視点は、国内美術を見る時にも同様に働き、アジア全体の動向から見るとい…
「日本美術史」は岡倉天心が明治二十三年から二十五年にかけて東京美術学校で行った講義の記録。「邦人の講述せる最初の美術史」とされ、日本人による日本美術史研究がここから始まった。現在の視点からあれこれ思うよりも、端緒に立った者の風景に少し立ち…
画狂老人卍、葛飾北斎、享年90。75歳の時に書いた、絵本「富嶽百景」初編の跋文がいかしている。 己(おのれ)六才より物の形状(かたち)を写(うつす)の癖(へき)ありて 半百の此(ころ)より数々(しばしば)画図を顕(あらわ)すといえども七十年…
図版63点に狂歌絵本『隅田川両岸一覧』と『潮来絶句集』が完本収録されている。三十代半ばで勝川派を去ったのちの壮年から老年にかけてのとどまることを知らない画業の営みはまさに圧巻。七十歳になって傾注した錦絵の「富嶽三十六景」をへて、七十五歳ご…
歌麿の狂歌絵本三部作を選書で気軽に鑑賞できる一冊。鮮やかな図版がうれしい。残念なのは、選書ということもあって見開き180度全開にして見れないところ。まあ、やろうと思えば見れるのだろうけれど本が傷んでしまいそうでこわい。 bookclub.kodansha.co…
図版57点に狂歌絵本三部作『潮干のつと』『百千鳥』『画本虫撰』が完本収録されている。贅沢。歌麿の狂歌絵本は伊藤若冲の画業を知ったときのような高揚感をまた味あわせてくれた。江戸絵画の世界は深い。時間をかけて探索するに値する世界が、また目の前…
摺りの技術がよく紹介されているような印象を持った。 (雲母摺は)宝暦十二年(1762)、勝間龍水が、部分的にではあるが『海の幸』に用いたのが最初。その後二十数年を経た寛政元年(1789)、歌麿が初めて雲母摺を大首絵の地塗りに登用した。以来、この技術…
図版の数は比較的少ない感じがするが、少ないなかで絵師の魅力を最大限に伝えている。選択の妙が味わえる。特に喜多川歌麿の繊細な線の良さが感じられる一冊となっているように思えた。「富本豊ひな」「歌撰恋之部 物思恋」「逢身八景 お半長右衛門の楽顔」…
絵師だけではなく彫師、摺師の卓越した技術をやさしく教えてくれる一冊。紹介だけでなく消しゴム版画で実践に誘うところも魅力的。制作過程の紹介から簡易体験までの一連の流れをまとめあげた24ページから47ページまでがこの作品の味わいどころ。そこを…
菱川師宣、鳥居清信から歌川国芳、月岡芳年まで22人、82点の作品で浮世絵美人画の世界を紹介。幕末に向かう溪斎英泉以降の19世紀美人画に描かれる流行の面長のつり目顔がどうして流行ったのか? 自分の趣味と違うものに対する興味が湧いた。 文政期(181…
図版七十点と俳諧(美人画)絵本『青楼美人合』全五冊で春信を味わえる一冊。むき卵のようなつるんとした顔立ちの細身の美人が地上のしがらみにとらわれず重さがないようにすっと佇んでいる姿が見るものを夢見心地に誘ってくれる。画題に労働や家事の場面を…
題名のとおり芭蕉と蕪村を対比させて描き出している一冊。 芭蕉の「高く心を悟りて俗に帰るべし」(『三冊子』)は、「風雅の誠」などの理想を高くもって、日常卑近なものにあたることを説いたものである。一方、蕪村は日常卑近な俗を用いながら、それを超越…
蕪村の味読を勧める岩波新書の一冊。ゆっくりと、古典文芸にも目を向けながら、蕪村の句に親しみましょうという誘いがある。 白梅や誰が昔より垣の外 この句は、すべて和歌ことばからできている。俳諧的語彙(俳言 はいごん)が皆無で、和歌的表現で尽くされ…
300点の図版と解説文で近世俳諧を紹介。句の内容だけではなく、俳画や各俳諧師の書跡も含めて総合的に賞味されてきたのが俳諧の世界なのだなということがわかる。蕪村の文人画はこれまでにもみる機会があったが、芭蕉の書や絵を意識してみたことはなかった。…
2010年春、府中市美術館で開催された展覧会の図録を再編集した書籍。収録図版212点。国芳といえばまず猫だが、人間の顔をした魚介系の作品(34,64など)も笑えて楽しい( ´∀` )。 古くから日本の絵は繊細であったが、それは、対象の再現とはまた別なものだっ…
「応挙の子犬」と「国芳の猫」を柱に江戸期に開花したかわいい絵を紹介。一般的な美術本ではなかなか見られない作品がたくさん取り上げられていて、楽しく眺められる一冊。若冲の新発見作品も収録されていてお得。2013年春、府中市美術館で開催された展覧会…