読書三昧(仮免) 禹歩の痛痒アーカイブ

乱読中年、中途と半端を生きる

佐藤敏明『文系編集者がわかるまで書き直した世界一美しい数式「eiπ =-1」を証明する』(2019)

中卒レベルの数学力の読者層に向けてオイラーの公式オイラーの等式を理解してもらおうと書かれた一冊。章末の練習問題を端折ってしまっても、本文さえ読み通せば、なんとなく分かった気にさせてくれる。対数や指数の意義についても、計算を簡便に高速にするために発明された道具という視点を明確に伝えてくれているので、学習途中での数学記号への存在の意味レベルでの抵抗感を少なくしてくれている。オイラーの等式「eiπ =-1」についても、複素数平面上の単位円をあらわす式というところまで証明と解説文で連れて行ってもらえると、理系の世界で美しいと言われていることも、なるほどと伝わって来る。残念なのは数式を普段使いしていない人間には、本を一冊読んだくらいでは数式への愛着が湧いてこないことだ。オイラーの公式、等式は、波や振動を計測・制御するためには必須の公式ということなので、光や電気や量子力学の世界を覗いてみて、分からなくても具体的に使用されているところを見ていけば、親しみももっと湧いて来るものだと少し期待している。

 

これで、世界一美しい数式が導かれた。
このように実数の世界では、全く関係がないと思われた指数関数・三角関数が、複素数の世界まで広げると、オイラーの公式で示されるように密接な関係があることがわかった。さらに、数学で重要な定数であるe、π、iが一つのシンプルな式「eiπ =-1」で関連づけられるという見事な風景が複素数の世界には広がっている。(第5章「複素数平面上のeiπ」p226)

 

数学の世界から見るこの世界のモデル。

 

佐藤敏明
1950 -
レオンハルド・オイラー
1707 - 1783