読書三昧(仮免) 禹歩の痛痒アーカイブ

乱読中年、中途と半端を生きる

高岡詠子『シャノンの情報理論入門 価値ある情報を高速に、正確に送る』(講談社ブルーバックス 2012)

情報理論の父、クロード・シャノンを紹介した入門書。「あらゆる情報は数値に置き換えて表わすことができる」として、情報のデジタル化を理論的に支えた業績を3つの視点からとらえられるようにしている。


1.情報を量ることができることについて
2.情報をコンパクトに表現することについて
3.情報を正確に伝えられることについて

 

カルチャー・センターでの語り+数式での解説といった体裁。Amazonのレビューなどでも評価は高く、内容も過不足ない感じなのに、物足りなさ感が残ってしまうのは何故だろう。

ある情報源の価値を判断するのが「情報エントロピー」で、これが情報の世界の期待値と考えると分かりやすいのです。この期待値を計算するためには、統計学の期待値と同様、情報源に入っている「個々の情報の大きさ」と、「その情報が出現する確率」を使うことになります。
というわけで、次に「個々の情報の大きさ」と「その情報が出現する確率」を数学的にどのように定式化するのかを見てゆくことにします。
(第3章「情報の価値?」p54)

 

だぶん、リアル世界の入門講義なら満点に近い講師。親しみやすいし、理論部分も入っていきやすい。ただ、独りで本を読む際には、理論に附随していて欲しい物語的要素が、語りの面も内容の面もともにすこし薄いような気がする。200ページに満たない本なので、シャノンの伝記か、ちょっと気張って情報理論の専門書のようなものをもう一冊添えてあげると、もっと楽しめるのかもしれない。

 

目次:
第1章 情報科学の歴史
第2章 情報とはなにか
第3章 情報の価値?
第4章 通信量を減らす?:情報源符号化定理
第5章 伝言ゲームでは困る──誤りを減らす
第6章 情報科学の歴史の中の情報理論

 

bookclub.kodansha.co.jp


クロード・エルウッド・シャノン
1916 - 2001