読書三昧(仮免) 禹歩の痛痒アーカイブ

乱読中年、中途と半端を生きる

野口米次郎「空しい歌の石」( The Pilgrimage 1909『巡礼』 より )

空しい歌の石

雨が降ると私の夢はのぼる………六月の雲のやうに、
歌が、私の耳もとに湧きたつ、
風より軽い足拍子が、或は高く、或は低く、
波うち、私の眼は夢で燃える。
『私は何者だ?』
『奈落の底の幽霊だ、
夜暗の上に空しい歌の石を積みあげ、
焔のやうに踊り狂つて、やがては消えうせる。』

( The Pilgrimage 1909『巡礼』 より )

野口米次郎
1875 - 1947
 
野口米次郎の詩 再興活動 No.039