写真と夢と記憶をめぐる散文詩。
輪郭も存在感もあいまいでありながら執拗に再現してはまとわりつく幻影をいくつも長時間にわたって見せられたかのような読後感を残す作品。でも、まあ、それほど悪いものではない。
思考の明暗の中で、世界のイメージはそのつど反転しながらゆらめきはじめる。ろうそくの炎のように。裏箔のない鏡にうつる夢のイメージのように。現実はそこをすり抜けて、歪曲してわたしたちのもとへと戻ってくる。
(「ふりかえるオルフェウス」部分)
近年ではめずらしい現代フランスの詩の翻訳で、ありがたい仕事ではあるのだが、詩の翻訳なのに本文の中に訳注を埋め込むのはちょっと疑問。読みとばしてしまえばいいだけのことだけれども、初読では感覚醸成のリズムが崩れて、詩を読んでいる気分に
ちょっと邪魔がはいる。
ジェラール・マセ
1946 -
桑田光平
1974 -