読書三昧(仮免) 禹歩の痛痒アーカイブ

乱読中年、中途と半端を生きる

【技術に関する本2冊】フリードリヒ・ゲオルク・ユンガー『技術の完成』(原書 1946, 人文書院 2018)、ジャン=リュック・ナンシー『フクシマの後で 破局・技術・民主主義』(原書 2012, 以文社 2012 )

技術に駆り立てられるようにして人間も自然も搾取されながら、破局破局のあいだを生きる近代以降の人間のありようが描かれている二冊。「積み重ねられ、彷徨する七〇億の存在」(ジャン=リュック・ナンシー)が、技術の集積を使い、純粋な自然からの贈与で持続的に生きながらえていくことはできるのだろうかとぼんやり考えながら読んだ。世界中のどの地域にあっても今現在の生活レベルを極端には落としたくないだろうし、むしろ向上させるべき地域はいくらでもある。そうすると七〇億はいくら何でも多すぎだろう。無理筋を歩んでいることを意識的にも無意識的にも察知しやすい環境であるためか、日本は急激な少子化傾向になり、わたし自身もその傾向に加担している。それはまた別の破局を誘引しているのかもしれないが、基本的に八方塞がりの状況のなかで、そこそこの快適と安心をさがしていくほかはない。地上の無限はもうかなり前に閉じている。


フリードリヒ・ゲオルク・ユンガー『技術の完成』

www.jimbunshoin.co.jp

【付箋箇所】
24, 33, 38, 44, 54, 78, 98, 108, 126, 130, 134, 157, 166, 182, 187, 194, 219, 225, 226, 236, 240, 241, 242, 248, 263, 264296, 297, 311, 315

目次:
一 〔技術とユートピア
二 〔労働とゆとり〕
三 〔富と貧困〕
四 〔技術的組織と損失経済〕
五 〔技術による収奪と合理性〕
六 〔経済的思考の技術的思考への敗北
七 〔エコノミーと大地の掟〕
八 〔自動化の増大と時間〕
九 〔技術的搾取過程の基盤としてのデカルト理論〕
一〇 〔ガリレイニュートン力学が時間概念に及ぼす影響〕
一一 〔自然科学と機械化された時間概念〕
一二 〔死んだ時間〕
一三 〔歯車装置としての技術〕
一四 〔決定論と統計的蓋然性〕
一五 〔意志の非自由性〕
一六 〔労働の専門化と細分化、労働者の諸組織〕
一七 〔労働問題の成立〕
一八 〔機械と労働者組織、労働者の失意〕
一九 〔労働者と搾取、安全性〕
二〇 〔意図的な技術と意図的でない技術、目的論と力学〕
二一 〔因果論的思考と目的論的思考の協働〕
二二 〔技術的合目的性の限界〕
二三 〔機械機構と人間組織の相互関係〕
二四 〔機能主義と自動化〕
二五 〔技術的組織と他の諸組織、技術と法〕
二六 〔科学と技術〕
二七 〔技術的組織と貨幣・通貨制度〕
二八 〔技術的組織と教育〕
二九 〔技術と栄養摂取〕
三〇 〔技術的人間組織による国家の機械的改変〕
三一 〔科学的悟性の収奪的特徴〕
三二 〔科学的真理の概念〕
三三 〔技術の消費力と惑星規模の組織化、恒常的革命の時代、工場の稼働事故〕
三四 〔技術的完成の概念〕
三五 〔技術と大衆形成〕
三六 〔機械機構とイデオロギー・俳優〕
三七 〔イデオロギーと剥離〕
三八 〔動員(流動化)としての技術〕
三九 〔ローマ史の理論〕
四〇 〔技術とスポーツ〕
四一 〔映画のメカニズム〕
四二 〔自動化の麻酔的魅力〕
四三 〔惑星規模で組織化された収奪、総動員、総力戦〕
四四 〔欠乏諸組織の課題〕
四五 〔ライプニッツ、カント、ヘーゲルの哲学〕
四六 〔機械的進歩と根源的退行〕
補遺 世界大戦

内容外観

訳者解説1「技術をめぐる交友、ユンガー兄弟とハイデガー今井敦
訳者解説2「エコロジーの書としての『技術の完成』」中島邦雄
訳者解説3「フリードリヒ・ゲオルク・ユンガーにおける社会思想の視座」桐原隆弘


ジャン=リュック・ナンシー『フクシマの後で 破局・技術・民主主義』

www.ibunsha.co.jp

【付箋箇所】
50, 71, 151, 154, 160, 179, 180, 184, 190

目次:

序にかえて
Ⅰ 破局の等価性――フクシマの後で (2012)
Ⅱ 集積について (2008)
Ⅲ 民主主義の実相 (2011)
訳者解題

フリードリヒ・ゲオルク・ユンガー
1898 - 1977
ジャン=リュック・ナンシー
1940 -