読書三昧(仮免) 禹歩の痛痒アーカイブ

乱読中年、中途と半端を生きる

石黒浩 『どうすれば「人」を創れるか アンドロイドになった私』

石黒浩
どうすれば「人」を創れるか アンドロイドになった私
2011

石黒氏は発想が特異だ。最先端で研究している人の発想を覗き見れることは一般人には刺激的だ。
たとえば「人間のミニマルデザイン」「最小限の人間を作るという発想」などということは文字面だけを見れば奇怪だが人工知能やロボットを考えれば極めて先端的で魅力的だ。だが、石黒氏はそれも超える。機能ではなく見た目の最小限ということまで考え、作成してしまう。実物に触れればみな違和感はないという人間のミニマルデザイン「テレノイド」は、書籍で見る限り幽霊や天使のイメージに近い。実物をもって新しい感覚世界を切り開き、通常化してしまう力に驚かされる。

ほかにも自分の作成したアンドロイドとの時間経過による差分をアンドロイド側に寄せて整形してしまうという選択、アンドロイドと芝居を作るという実践など、奇妙というよりも芸術性を感じる。

技術とは元々芸術から生まれたものであり、確たる理由もなく新しいものを生み出していく芸術に、方法論や設計図を与えることで、芸術が技術になるのだ。技術開発においても、本当の発明というのは、何もないところから新しいものを作ったときに成し得るものであり、そこでは多分に芸術的センスが要求される。技術者も研究者も、まず芸術家であるべきなのである。(p183)

目次:
第1章 日常活動型からアンドロイドへ
第2章 遠隔操作型アンドロイドを創る
第3章 サロゲートの世界
第4章 アンドロイドになる
第5章 ジェミノイドに適応する
第6章 ジェミノイドに恋をする
第7章 実体化するもう一人の自分
第8章 人を超えるアンドロイド
第9章 人間がアンドロイドに近づく
第10章 人間のミニマルデザイン「テレノイド」

石黒浩
1963 -