読書三昧(仮免) 禹歩の痛痒アーカイブ

乱読中年、中途と半端を生きる

ジャン・ラコスト『芸術哲学入門』(原著 1981, 1987 阿部成樹訳 白水社 文庫クセジュ 2002)

プラトン、カント、ヘーゲルニーチェハイデガーメルロ=ポンティの芸術哲学の本流ともいえる流れを基本に、アラン、ショーペンハウアーボードレールヴァレリーバシュラールなどの彩り豊かな芸術論者を配する、西欧芸術論を概観するのに優れた軽快な一冊。借りて読んだ本ではあるが、書店で見かけたら購入して手元に置いて置きたいと感じたくらい良い。見通しも風通しもよくて、ちょっとした確認や、読書案内、読書伴走者として役に立ちそうだ。

特徴としては、作品が持つ透明化することのない物質性に一貫した関心を持っているところだろうか。
ハイデガーの芸術論の印象が強く残っていることがそう思わせるのかもしれない。

芸術作品は、実在しているということ自体が衝撃をもたらすのである(そしてこの衝撃が、根拠もなく快に基礎づけられている美的経験の真の姿なのである)。逆に、道具は、すみやかにその有用性の中に姿を消す。なぜなら、その道具自体が大地の忘却なのだから。作品は本質的に、異様なもの(ウンゲヴェーンリッヒ)であり、怪物じみている。というのも、作品が、通常は目に見えぬものを見せつけるからである。
(第6章「芸術と真理」Ⅱ作品の真理 より)

感覚いるのに気にも留めていなかったものをまざまざと作品化して実在化し感覚できるようにしているところに作品の偉大さがあり、その様相を浮かび上がらせているところに芸術論の価値があることを教えてくれている。


【目次】
第1章 模倣
第2章 美学の問題
第3章 芸術の運命
第4章 想像力
第5章 芸術家
第6章 芸術と真理
第7章 表現

 

【付箋箇所】
25, 38, 42, 45, 56, 72, 96, 98, 99, 104, 105, 114, 116, 125, 132, 133, 136, 151, 152, 156

ジャン・ラコスト
1950 - 
阿部成樹
1962 -