読書三昧(仮免) 禹歩の痛痒アーカイブ

乱読中年、中途と半端を生きる

【中井正一を読む】02. 木下長宏『[増補] 中井正一 新しい「美学」の試み』(平凡社ライブラリー 2002)美を足掛かりにした現実の濁流への抵抗

抵抗者という視点から中井正一を語った一冊。理論的な骨格を描き出した「委員会の論理」(1936)とそれを広範に向けて拡張展開した「美学入門」(1951)を中心に中井の弁証法唯物論を核に据えた論考を読み解いている。

中井正一が『美学入門』のなかで展開する芸術論[美学]の歴史は、領域区分の観点からいえば、ほとんど、芸術の領域での出来事を見ずかつ語らず、その外の領域での事象辿り観察して、それが芸術の問題へ深く関連することを語ってきている。というのは、逆にみると、中井正一がその芸術の歴史、芸術思想・美学の歴史の頂点に見ようとする「芸術的存在」は、こうした狭い意味での芸術の領域に所属する芸術の外にある人間の諸活動と渉り合いながら、それらをより高次に生かすありかたのことを言おうとしている、と読めるからである。
(第2章「中井正一と「委員会の論理」あるいは、中井正一の「美学」入門(その2)」p115-116)

中井正一は「委員会の論理」の内容を読み取れるようにして読みすすめよ、ということを教えてくれている。

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目次:
序 中井正一の遺したもの
第1章 中井正一の「美学」入門
第2章 中井正一と「委員会の論理」あるいは、中井正一の「美学」入門(その2)
第3章 中井正一の生きかた
第4章 中井正一と「日本の美」論あるいは、中井正一の生きかた(その2)

【付箋箇所】
45, 50, 66, 68, 80, 82, 96, 105, 107, 118, 121, 151, 172, 203, 223, 261

中井正一
1900 - 1952
木下長宏
1939 -