読書三昧(仮免) 禹歩の痛痒アーカイブ

乱読中年、中途と半端を生きる

ロボット

河本英夫+稲垣諭 編著『iHuman AI時代の有機体-人間-機械』(学芸みらい社 2019)

芸術家、哲学者、人工知能と人工生命の研究家など多方面で活躍する10名の人物によって、それぞれの視点から現時点での自然と人工の技術の関係性を問うた論考10篇。高度に発達した人工知能の視点から見れば思考や身体というものにおいて人間という存在自…

平野晋『ロボット法 <増補版> AIとヒトの共生にむけて』(弘文堂 初版 2017, 増補版 2019 ) 人間のコントロール外の領域に踏み込みつつある技術と共にあることについての考察

ベルクソンは人間の振舞いに機械的な強張りを見たときに笑いが生じると説いた。第三次AIブーム下にある2022年の今現在、特定領野における限られた行動においては、一般的な人間よりも滑らかで高度な技術を見せるロボットやAIはいくらでもいて、その…

落合陽一を読み返す 『魔法の世紀』(2015)『デジタルネイチャー 生態系を為す汎神化した計算機による侘と寂』(2018)

落合陽一の主著二作を読み返す。圧倒的計算力を基盤にした計算機主導の環境変革のありようが描出されている。言語よりも計算に信を置く立場ながら、言語で書かれた書籍としての完成度は高く、時代の動きに触れられる記念碑的な作品となっていると思う。イン…

森政弘『ロボット考学と人間 ―未来のためのロボット工学―』( オーム社 2014 )ロボットと遊びと能動力

森政弘は「ロボットコンテスト」の創始者であり、「不気味の谷現象」の発見者。仏教に関する著作も持ち、たいへん懐が深い。ロボットとの関わり方は非常に日本的な繊細さにあふれており、わき上がる情熱とともに静謐な慈しみのこころが伝わってくる。 日本文…

ショーン・ジェリッシュ『スマートマシンはこうして思考する』(原書 2018, 依田光江訳 みすず書房 2020)AI時代に発想を柔らかくするための一冊

著者ショーン・ジェリッシュは元Google機械学習&データサイエンスチームのエンジニアリング・マネージャ。技術的なことをいくらでも語れるだろうに、本書では歴史的な各プロジェクトを支えた技術についてではなく、暗礁に乗り上げた際にブレイクスルーを齎…

西垣通『生命と機械をつなぐ知 基礎情報学入門』(高陵社書店 2012)ネオ・サイバネティクス論の一分野として著者が提唱する基礎情報学の高校生を想定した初学者向け教科書32講

『基礎情報学 生命から社会へ』(2004)『続 基礎情報学 「生命的組織」のために』(2008)と展開してきた基礎情報学のエッセンスを提唱者本人が可能なかぎりわかりやすくコンパクトにまとめあげた一冊。図版の多用や本文中の具体例あるいは関連コラムで親しみや…

稲葉振一郎『AI時代の労働哲学』(講談社選書メチエ 2019)

ビックリです。 人工知能やロボットがこのまま進化していって自律的な行動をするようになったら法人格を与えられるようにすすんでいくだろうというのは、ごもっともな指摘で、リアリティがありました。法人としての人工知能やロボット。現実化しそうな議論…

前野隆司『AIが人類を支配する日 人工知能がもたらす8つの未来予想図』(2019)

受動意識仮説+幸福学の前野隆司がシンギュラリティを見据える世界について語った一冊。現状認識は正しく精密に、将来展望においては最大限の希望を掲げて前進することをすすめているように感ぜられた。特に東洋的あるいは日本人的な感覚からするとシンギュ…

小川和也『デジタルは人間を奪うのか』(2014)

テクノロジーには良い側面もあれば危険な側面もあるということの再確認。テクノロジーの進歩を享受しつつ新しい世界の姿に適応していく労力も惜しんではならない。 本来、デジタルの船に乗り込んだわれわれには、これまでの偉大な想像よりももっと偉大な創造…

吉藤オリィ『サイボーグ時代 リアルとネットが融合する世界でやりたいことを実現する人生の戦略』(2019)

3年半の引きこもり生活の後、「人間の孤独を解消する」ことをミッションに、新しい技術の開発を推進する技術者・起業家の一冊。技術は身体の延長で、この世界にある困難や不自由を解消するための道具である。それだから、困難や不自由を解消したり、心地よく…

レイ・カーツワイル『シンギュラリティは近い 人類が生命を超越するとき【エッセンス版】』(2005, 2016)

困った。主役ともいえるナノボットのイメージについていけない。 ◆ナノテクノロジーを用いてナノボットを設計することができる。ナノボットとは、分子レベルで設計された、大きさがミクロン(一メートルの一〇〇万分の一)単位のロボットで、「呼吸細胞(レ…

前野隆司 『錯覚する脳 ─「おいしい」も「痛い」も幻想だった』(2007)

受動意識仮説について二冊目の本。意識がイリュージョンであり、視覚情報が脳の生成物であることを強調した著作。最後は仏教の「空」に科学の知見から近づいていっている。 付箋箇所:30, 46, 57, 69, 88, 103, 130, 134, 201, 214, 215 目の誕生以前の世界…

前野隆司『脳はなぜ心を作ったのか ─「私」の謎を解く受動意識仮説』(2004)

先日のエントリー、清水亮の『よくわかる人工知能 最先端の人だけが知っているディープラーニングのひみつ』で気になった受動意識仮説の提唱者の著作。私にはわりと受け止めやすい仮説だった。 付箋箇所:21, 27, 36, 42, 46, 57, 65, 83, 88, 93, 108, 114,…

清水亮『よくわかる人工知能 最先端の人だけが知っているディープラーニングのひみつ』(2016)

対談メインの2016年当時最先端の人工知能関連情報。なかには出版後に詐欺罪で逮捕されたひとも含まれるが、それも含めて興味深く読み進めることができる。ほかには図版とNOTE(用語解説)が優れている。パワポ資料を作りなれているASCII編集者の面目躍如とい…

池上高志『動きが生命をつくる 生命と意識への構成論的アプローチ』(2007)

著者はじめての単著。私が手にしているのは2011年の第4刷。最先端のとがった研究成果を一般読者向けに紹介してくれている。一般向けではあるのだが、前提知識がないとある程度自分で調べながら読み進めていかないといけないかもしれない。いちいち調べるの…

『作って動かすALife 実装を通した人工生命モデル理論入門』

著者:岡 瑞起、池上 高志、ドミニク・チェン、青木 竜太、丸山 典宏 www.oreilly.co.jp2018 Alife(エーライフ):人工生命、Artificial Life。 コンピュータを使って生命の挙動(生命性)をシミュレートする。 オライリーから出ている本で、プログラミン…

中嶋秀朗『ROBOT ロボット ―それは人類の敵か、味方か― 』

中嶋秀朗 ROBOT ロボット ―それは人類の敵か、味方か― ロボット--それは人類の敵か、味方か | 書籍 | ダイヤモンド社 2018 定義も歴史も現状も教えてくれる入門書。 ロボットの定義(JIS B8445:2016)2軸以上がプログラム可能で、一定の自律性を持ち、環境…

石黒浩 『どうすれば「人」を創れるか アンドロイドになった私』

石黒浩 どうすれば「人」を創れるか アンドロイドになった私2011 石黒氏は発想が特異だ。最先端で研究している人の発想を覗き見れることは一般人には刺激的だ。たとえば「人間のミニマルデザイン」「最小限の人間を作るという発想」などということは文字面だ…