読書三昧(仮免) 禹歩の痛痒アーカイブ

乱読中年、中途と半端を生きる

佐藤優『国家のエゴ』(2015)

佐藤氏の論考と姜尚中氏によるロングインタビューの二部構成。

Ⅰ いま、戦争を正面から考える ―私が若い読者に伝えたい、いくつかのこと
気になったところは、無限や永遠を思考の対象とするには注意が必要であるという指摘。

死者との連帯に成功した思想は著しく強くなります。そんな思想を背景にした政治勢力は、周囲から見れば、そんなに非合理、非人道的であっても根絶は難しいのです。「死者との連帯」で恐ろしいのは、悠久の大義―これは、それぞれの集団によって具体的内容は異なりますが―に、身を捧げるという気構えを持った人は、他人の命を奪うことに対しての抵抗がほとんどなくなることです。(p76)

 
Ⅱ 「新・戦争のできる国」の正体――その先に何があるのか(インタビュー)
気になったところは、複数の視点があることへの配慮をもとうという指摘。

日本・中国・韓国の三国共通の歴史教科書を編纂しようというアイデアもありますが、それはまだ早いと思います。今は、年代ごとに日韓両国の歴史教科書に記述してあることを、ひたすら並置した共通歴史教科書を編纂すべきだと思います。それを読んでお互いの歴史観の大きな違いを噛みしめる。(p193)

 他には「少なくとも余計なことはしない」(p156)ということばも残った。

publications.asahi.com

佐藤優
1960 -
姜尚中
1950 -