「ビートの父」として知られる1905年生まれのレクスロスから上海から移住して英語で詩を書く1957年生まれのワン・ピンまで、20世紀のアメリカの特徴的な詩人を集めて、アメリカ現代詩の動向を概観できるようにしたアンソロジー『アメリカ現代詩101人集』と、その続編で20世紀後半から21世紀にかけてニューヨークで活動した比較的名の知られていない新しい詩人の紹介となる『ニューヨーク現代詩36人集』の二作。質量ともに『アメリカ現代詩101人集』のほうが圧倒的に重いのは、ポストモダン以前のモダンの空気感と既成のものに対する抵抗運動の激しさによるところが大きい。
『ニューヨーク現代詩36人集』で目を惹いたのは、1979年生まれで高校生詩人として出現したナターシャ・ル・ベルの「オンナをハコ詰めにする」くらいのもので、それと比べれば『アメリカ現代詩101人集』にはビックネームが並んでいるなかにマイナーではあるが優れた詩人の詩作品がちりばめられていて、再確認と新発見がいいバランスで起こる充実のつくりになっている。
グェンドリン・ブルックス、ウィリアム・ブロンク、フィリッ・ホエーレン、ボブ・コフマン、アン・セクストン、アドリエンヌ・リッチ、エスリッジ・ナイト、クレイトン・エシュルマンなど新しく興味をひかれる詩人もいれば、「レモネード」のレイモンド・カーヴァーやシルヴィア・プラス、ゲーリー・スナイダーなど改めて読み返してみたくなった詩人たちもいた。
海外詩のアンソロジーは今の時代なかなかお目にかかることはできないものになってしまったが、たまに読んでみると、個人の詩集を読むときとは違った感覚、時代や地域の佇まいを感じ取ることができてなかなかいいものである。