読書三昧(仮免) 禹歩の痛痒アーカイブ

乱読中年、中途と半端を生きる

『ドレの失楽園』(原作:ジョン・ミルトン、翻案:谷口江里也、挿画:ギュスターヴ・ドレ 宝島社 2010)

創造神による独裁的な統治に反乱を企てた革命戦士としての堕天使ルチフェルを描いたミルトンの『失楽園』を更に翻案しドレの挿画とともに谷口江里也が新たな息吹を吹き込んだ作品。原作と翻案作品とのあいだにどれほどの差があるのかは改めて比較してみないとわからないというのが正直なところだが、今回谷口江里也の翻案作品を読んだ印象だと、キリスト教的にはすこぶる異端の香りの高い作品であり、その点が劇的に強調されているような気がする。神に対する反逆を美的に描いているところは素人目にも正統の教義から許される範囲をだいぶ超えている。また、日本的な情緒優位の描き方にもなっているようで、スペクタクル感が強い。永井豪の漫画を読んでいるような雰囲気もある。ドレの挿画の壮麗さも魅力的で、文章からも映像からも原作を確かめたくなるような誘惑の力を持った作品であると思った。

tkj.jp

【付箋箇所】
27, 49, 75, 98, 115, 131, 143, 144, 155, 167, 227, 243, 271, 278, 313, 316

目次:
プロローグ
第一幕 大魔神(デビル)
第二幕 超深淵(アビスモ)からの脱出
第三幕 超宙空(バシオン)での対話
第四幕 楽園(エデン)
第五幕 エバの夢と天使の出現
第六幕 天使軍の戦闘
第七幕 天地の創造
第八幕 楽園の午後
第九幕 アダムとエバ
第十幕 地球と超深淵
第十一幕 大天使ミカエルの話
第十二幕 神々たちの願い
あとがき


ジョン・ミルトン
1608 - 1674
谷口江里也
1948 - 
ギュスターヴ・ドレ
1832 - 1883