読書三昧(仮免) 禹歩の痛痒アーカイブ

乱読中年、中途と半端を生きる

『時を超えるイヴ・クラインの想像力 不確かさと非物質的なるもの』(美術出版社 2022)

金沢21世紀美術館、2022年10月1日~23年3月5日開催の企画展「時を超えるイヴ・クラインの想像力―不確かさと非物質的なるもの」の公式図録。

第二次世界大戦後、核による全世界の滅亡を織り込んだ空虚な時空間に投入された、シンプルだがとても過激なイヴ・クラインの作品を中心に、作品の造形性を極力排した非物質性を志向する作家たちの作品を合わせて紹介している。モノクローム作品と金箔の金と心を揺さぶる深い藍色のインターナショナル・クライン・ブルーが衝撃的なイヴ・クラインのほかには、切り裂かれたキャンバスのルーチョ・フォンタナ、足で絵を描いた白髪一雄、無限のネット(網)の草間彌生などが収録されている。

ヒルな時代のニヒルな作品と言われることもあるというのだが、作品の存在感と美しさは圧倒的で、虚無感などととはまったく縁のないような、緊密な時空間を体験させてくれる。本物はもっとすごいのだろうと鑑賞欲を刺激する美しい一冊。

 

www.hanmoto.com


イヴ・クライン
1928 - 1962