読書三昧(仮免) 禹歩の痛痒アーカイブ

乱読中年、中途と半端を生きる

柳瀬尚紀訳 ロアルド・ダール『脚韻(きゃくいん)ソング』(原著 2005, 評論社 2008)

ロアルド・ダールの物語作品の中にちりばめられた詩や歌を拾い集めた全47篇の韻文アンソロジー。ルビつきで、総勢26人というたくさんの、それぞれ個性的なイラストレーターの挿し絵がついていて、贅沢な絵本作品集を読んでいるような感じにさせてくれる一冊。10歳前後から老人まで楽しめる、ファンタジックな韻文作品集。

魔術師的な翻訳技巧の持ち主である柳瀬尚紀の日本語への翻訳は、原作の韻文にも負けない豊穣さがあって、日本語の柔軟さや懐の深さを実践的に伝えてくれている。本書もまた、説明的でなく、訳文のみで原作の味わいを過不足なく伝えるという、柳瀬尚紀一流の一貫したポリシーのなかで成された優れた訳業である。同じ訳者のなかでは、ルイス・キャロル作品の翻訳といちばん似た傾向にある仕事かもしれない。

まずは出会いがあったらページを開いてみることをお勧めする。

www.hyoronsha.co.jp

目次:
その1 さあさあ、みなさんいらっしゃい
その2 最良のふるまい
その3 めずらしすぎる生き物たち
その4 毒気がどくどく
その5 いるいる、こんなの
その6 さあさあ、みなさんごいっしょに
その7 おまけを少々

ロアルド・ダール
1916 - 1990
柳瀬尚紀
1943 - 2016