読書三昧(仮免) 禹歩の痛痒アーカイブ

乱読中年、中途と半端を生きる

西脇順三郎の日本語の詩を通しで全部読んでみる(一回目)

生前刊行された15冊分の詩集と未刊詩篇、拾遺詩篇、依頼によって書かれた校歌、自作の欧文詩篇の本人による訳詩まで、完成している日本語作品をはじめてとおして読んでみた。軽い仕上がりで、スピード感をもって読みすすめることができるのは、西脇順三郎による改変推敲によって、読みやすいリズムと内容に整えられているからだということが、はじめて実感できた。比較的若い時期に書かれた未刊行の詩篇のほうが、一般に想定される詩の骨格を持っていて、かっちりした印象があることも、西脇順三郎の詩の世界がまだ完成されていないためなのであろうという考えにつながった。50代以降の飄々とした味わいの作品は、永遠に触れながらどこまでも流転していくための乗り物であるようだ。西脇順三郎の読者は彼が創作し運転する乗り物に一時的に同乗させてもらう僥倖に恵まれる。くりかえし読むならば、断られもせず、何度でも同乗させてもらうことができる。ありがたいことだ。

太陽が地平に近づくとき
青いマントをひつかけ
ガスタンクの長びく影をふんで
どこかへ帰ろう
明日はまた
新しい崖
新しい水たまりを
発見しなければならない
(「えてるにたす」より)

Ambarvalia 1933年 椎の木社
あむばるわりあ 1947年 東京出版
旅人かへらず 1947年 東京出版
近代の寓話 1953年 創元社
トリトンの噴水 1930年 天人社『シュルレアリスム文學論』所収
ANDROMEDA 1955年 トリトン
第三の神話 1956年 東京創元社
失われた時 1960年 政治公論社
豊饒の女神 1962年 思潮社
えてるにたす 1962年 昭森社
宝石の眠り 1963年 筑摩書房
禮記 1967年 筑摩書房
壌歌 1969年 筑摩書房
鹿門 1970年 筑摩書房
人類 1979年 筑摩書房 
未刊詩篇(「人類」以後)
拾遺詩篇
雑篇
自作詩訳詩

【今回の付箋箇所】
全集1
20, 45, 52, 124, 146, 155, 202, 266, 329, 371, 389, 391, 403, 419, 493, 508, 523, 524, 536, 541, 555, 560, 569
全集2
107, 183, 185, 208, 250, 289, 301, 422, 424, 427, 430, 490, 522, 546, 550, 557, 577, 583, 588
全集3
16, 54, 87, 145, 198, 202, 226, 230, 259, 266, 329

www.chikumashobo.co.jp

www.chikumashobo.co.jp

www.chikumashobo.co.jp

西脇順三郎
1894 - 1982