読書三昧(仮免) 禹歩の痛痒アーカイブ

乱読中年、中途と半端を生きる

鶴岡善久『アンリ・ミショー 詩と絵画』(沖積舎 1984)


小海永二と同じくアンリ・ミショーの特異な隠者性に魅かれて詩と絵画の世界を探求した詩人鶴岡善久によるアンリ・ミショー論。多くの詩が引かれ、そこにあらわれたイメージについて語られることが多いので、詩と絵画双方を論じていながら、ミショーの絵画の特異性のほうの印象が強く残る。
鶴岡善久の指摘として特に優れていると考えられるのは、ミショーによる幻覚剤メスカリンの実験が、ボードレールコクトーやド・クインシーなどのような現実逃避とは一線を画した、身体と精神の変様に関わる探索を目的としたものというところと、ミショーの絵画作品における運動性の生々しさをうまく伝えているところのふたつの点。長年画集や作品そのものを収集し、後に直接交流するようにもなった鶴岡善久ならではの生き生きしたミショー像に出会える。
ミショーの絵画作品は口絵にモノクロ図版で9点収められているが、鶴岡善久が興奮気味に語っているミショーの絵の艶めかしさのようなものまでは伝わってこないのはすこし残念。作品はミショーのほかの画集で再確認したほうが良い。

 

【付箋箇所】
36, 47, 49, 82, 94, 104, 118, 141, 172
目次:
口絵
 アンリ・ミショーの作品抄 (モノクロ図版9点)
 アンリ・ミショー著作書影抄 (モノクロ図版22点)

序詩 眼のかたち

a 隠者のまなざし
b 敵意、眼、そして火山
c 侵犯とでんぐり返し
d 攻撃と深淵、メスカリンの探索
e 白昼の夢、転写の遍歴
f 線の虐殺、疾走、そして顔、眼

年譜
あとがき


アンリ・ミショー
1899 - 1984
鶴岡善久
1936 -