読書三昧(仮免) 禹歩の痛痒アーカイブ

乱読中年、中途と半端を生きる

『北村太郎の全詩篇』(飛鳥新社 2012)

生前刊行の全13詩集と未刊詩篇と詩劇1篇。反自然としての人間を詠う詩人。

物欲、心欲はなくなるはずがなく
ヒトの、ぼくたちの怪物性は
いよいよ彩りゆたかになり、矛盾の垣根の
無限につづく道ばたで、あいそよく頭を下げあう
(「すてきな人生」より)

詩作品と巻末の年譜からうかがえる実人生とのギャップにもちょっと驚く。1976年に54歳で朝日新聞社を退社してからの多産さとそれ以前の寡作の対比も考えさせられる。ヒトの怪物性は自分ばかりのせいとはいえず、かといって自分の責任でないともいえない。自分と環境とのあわいをくぐっていきながら、言葉と沈黙と静かに格闘している姿が見えてくる。

 

【目次】
北村太郎詩集 1947-1966
冬の当直 1972
眠りの祈り 1976
おわりの雪 1977
あかつき闇 1978
冬を追う雨 1978
ピアノ線の夢 1980
悪の花 1981
犬の時代 1982
笑いの成功 1985
港の人 1988
路上の影 1991
すてきな人生 1993
未収録詩篇 1937-1992
詩劇 われらの心の駅 1955


【付箋箇所】
39, 82, 88, 92, 142, 249, 272, 476, 486, 538, 611, s621, 678, 738, 772

北村太郎
1922 - 1992