言語の核心にある否定性、空隙、空無、未決定、無底について、ハイデガー『存在と時間』の「ダーザイン」の「ダー(そこ)」と、ヘーゲル『精神現象学』の「このもの」から、代名詞の指示作用、「意味内容をもたない空虚な記号」としての性格から考察している濃密な一冊。本書を読むことで、不安定な位置にある「わたし」や「あなた」について大きな気づきが得られることが期待できる。
わたしたちは言葉を発するとき、思考することを、言葉を未決定の状態にとどめたままにしておくことをせずにはいられないのだ。思考とは声が言語活動のなかで未決定の状態にあることの謂いにほかならない。
セミの声やロバの声と同じようには人間の声は存在しないと言われるているが、笑い声や鳴き声や叫び声や唸り声なんかはどうなのだろうと思うことは本書に促されたひとつの言語の未決定状態なのだろう。
【付箋箇所】
20, 25, 36, 46, 67, 72, 92, 96, 97, 104, 108, 112, 119, 123, 131, 135, 142, 143, 160, 181, 186, 188, 193, 203, 215, 216, 224, 244, 248, 268
ジョルジョ・アガンベン
1942 -
上村忠男
1941 -