読書三昧(仮免) 禹歩の痛痒アーカイブ

乱読中年、中途と半端を生きる

ジョルジョ・アガンベン『ニンファ その他のイメージ論』(編訳:高桑和巳 慶応義塾大学出版会 2015)

日本独自編集のアガンベンの芸術論集。絵画が中心で、映画と演劇とダンスが少々配合されている。全20篇。こういった著作では著者の論考そのものも楽しみであるのはもちろんだが、自分の知らない作家に出会えることの喜びもある。本書では日本ではあまりなじみのない現代イタリア画壇の画家幾人かに出えたことが私にとっては収穫であった。

ルッジェーロ・サヴィーニオ
ソニア・アルヴァレス
ディーター・コップ

日本語で検索してもほとんど何も出てこないこれらの画家を知る機会を持てたということで本書を読んだ甲斐があるというものだ。

Ruggero Savinio Ruggero Savinio - Wikipedia

Sonia Alvarez

Dieter Kopp

海外版でもあまり出てこないから、現代美術マーケットに関わりのないものにとってはきわめてまれな出会いといってもいいのだろう。

ほかには目を引いたものもいくつかある。

アビ・ヴァールブルクのムネモシュネ―、情念定型に関する言及
反復の四大哲学者といてのキェルケゴールニーチェハイデガードゥルーズと、かつてあったものの可能性を回復する反復の力
詩を性格づけるものとしての句跨りと句切り
クロソウスキーを論じる際に指摘された完全な快楽は紋切り型にあるという発見
動物と違い人間は事物から分離された見かけ・イメージを認識し関心を持つということの指摘

などである。
個展図録などに掲載された短いエッセイなどが中心となる本書は、ほかのアガンベンの主要著作とは異なりかなり親しみやすい。それでいながらアガンベンの思想の核となる部分(潜勢力について・自由な身振りと可能性の回復・スペクタクル社会への批判)も覗き見られるとても良い一冊であると思う。

www.keio-up.co.jp

【目次】
Ⅰ ニンファ
 ニンファ

Ⅱ イメージについて
 映画の一倫理のために
 ギー・ドゥボールの映画
 身振りと舞踊
 来たるべき身体 かつて一度も書かれたことのないものを読むこと
 哲学者とムーサ

Ⅲ 絵画をめぐって
 イメージの向こうの国
 顔と沈黙
 形象の不可能性と必然性
 顔面の天使 ジャンニ・デッシの絵画のために
 イメージの受苦 ジュゼッペ・ガッロの絵画のために
 童話と形象 ジョゼッタ・フィオローニの魔法童話のために
 存在しないアトリエ
 落ちる美
 ピエール・クロソウスキー
 ピエロ・グッチョーネの状況
 ソニア・アルヴァレス、毛布とベッドカヴァー
 黄金の枝
 栄光のイデア
 絵画の寓意

アガンベンとイメージ 編訳者あとがきに代えて

【付箋箇所】
9, 17, 43, 48, 56, 68, 70, 72, 78, 82, 122, 176, 179, 205, 

ジョルジョ・アガンベン
1942 - 

ja.wikipedia.org

アビ・ヴァールブルク
1866 - 1929

ja.wikipedia.org


高桑和巳
1972 -