読書三昧(仮免) 禹歩の痛痒アーカイブ

乱読中年、中途と半端を生きる

ジョルジョ・アガンベン『イタリア的カテゴリー ―詩学序説―』(原著 1996, 増補版 2010, みすず書房 2010)

実現はしなかったがイタロ・カルヴィーノとクラウディオ・ルガフィオーリとともにイタリア文化のカテゴリー的な諸構造を探求するための雑誌刊行を企画していたことがベースとなって考えられ書きつづけられたエッセイの集成。

そっか、カルヴィーノアガンベンは交流があったのか、と知ったことだけでも価値がある。ちなみにこの雑誌の企画の先にあるカルヴィーノの著作は邦題『カルヴィーノの文学講義 ―新たな千年紀のための六つのメモ―』(朝日新聞社 1999, 岩波文庫版は『カルヴィーノ アメリカ講義』2011)。少し読んだ記憶があるが、ほとんど忘れているのでまた覗いてみたい。

本書ではアガンベンの初期から長年にわたって書きつづけられている詩に関する考察が見られる。主にイタリアの詩を扱っているために、訳文とともに原文が提示されているとはいえ韻律などに関してはよく感じ取れないところもあって、残念な部分もあるのだが、悲劇/喜劇、俗語/ラテン語、スタイル:様式/マニエラ:技巧、讃歌/哀歌、散文/韻文、方言/国語、母語/死語といった対概念による探求が基本的姿勢として取られているところは言語や文化の差を超えて参考になる。言語によって思考し言語によって表現することに対するアガンベンの強固なこだわりを感じることができる作品集。ダンテの『神曲』における辺獄の天国と地獄に対するパロディとしての相についての記述など、鮮やかな論述がたくさんちりばめられている。

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【目次】
増補版へのはしがき
序文

第1章 喜劇
第2章 コルン——解剖学から詩学
第3章 言語の夢
第4章 パスコリと声の思考
第5章 詩の口述
第6章 脱‐我有化されたマニエラ
第7章 アンドレア・ザンゾットの「到来する(エルコメノス)」ロゴス
第8章 紋章学と政治学
第9章 オルフェウスに寄せる詩のトルソ
第10章 パロディ
第11章 隠された財宝の祝祭
第12章 詩の結句

[補遺]
バスクの少女の謎
言葉狩り
中間休止における間投詞
都市と詩
義人たちは光によって養われない
修士/共‐詩行のロンダ
悲劇の/との別れ

原註
訳註
初出
詩と哲学のあいだで——訳者あとがきに代えて 岡田温司

【付箋箇所】
7, 34, 45, 79, 114, 117, 136, 143, 168, 203, 219, 225, 265, 293, 348

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ジョルジョ・アガンベン
1942 - 

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岡田温司
1954 - 

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イタロ・カルヴィーノ
1923 - 1985

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