システムエンジニアという職業柄 ChatGPT の出現による業務上の圧力は現時点において身に染みて感じている。
問題が発生した場合にブラウザによる検索と情報収集よりはるかに迅速かつ的を射たソリューションの提案がソースコードレベルで提供される確率が高く、公開から間もないにもかかわらず、すでに利用しないという選択肢はないに等しいレベルにあるのだが、これは依頼者側システム担当者にも言えることであって、依頼者側担当者自身で検討可能な範囲が広がることで今まではタッチしない領域であったものについても具体的な質問や意見としてChatGPTの回答をもとに先手を切って切り込まれることが多くなってきている。
そうすると対応に関してのスピードと考察範囲に対する要求がよりシビアになり、応答する側もそれなりの心構えが必要になる。
直接的には言われない部分での生産性の要求が高まることはもはや避けられないが、必要以上に恐れることもないということを知るため、自己防御のために、経験に追加して最低限の理論的な裏付けを取り込んでおく必要がある。
本書は発行日が2023年06月26日とかなりリアルタイムでの日経BPの専門誌記者による最新記事を収集編集したもので、新しいツールに対しての取り組み方の指針になる一冊となっていると思う。
対話型AI ChatGPT が拓く世界には驚くべきものがあるが、注意しておかないといけない点もまた存在する。
学習データから統計的確率で応答内容を返すという仕組みのために、現時点の学習内容レベルでは明らかな誤りを躊躇なく正解として提示している場合もあるし、問い合わせ内容の質によって期待する回答から遠くなることもある。 また、ChatGPTからの回答を質問者側の環境にそのまま適用できずカスタマイズする必要もしばしば発生する。
ネット検索での知見獲得時と同じように、提供情報に関しての読み取り能力と、責任対象システムへの適用への判断能力・応用能力は今後も必要とされるであろう。
基本的には今まで必要であったリテラシーは今後も必要で、それが不要とされる世界はまだまだ先だと思う。技術の進歩は止まらないが、進化していく技術としてのAIに対応していく人間の歩みも止まらないし、人間側に必要とされる対応もそう突飛なものでもないということは本書を通しても確認できる。
【目次】
27, 28, 32, 36, 76, 91, 113, 135, 159, 226, 228, 232, 277, 287, 297, 310, 311, 339
【付箋箇所】
はじめに
第1章 生成AIが奏でる「破壊の序曲」
第2章 異形の天才集団、オープンAI 生成AIはこうしてできた
第3章 揺れるビッグテック 生き残りを懸けた「選択」
第4章 鳴動する国家 AI規制と地政学リスク
第5章 変わる仕事、消える仕事
第6章 「創造」の挑戦者たち 先進企業・組織の事例に学ぶ
第7章 今日から生産性を上げる「ずるい使い方」
おわりに