読書三昧(仮免) 禹歩の痛痒アーカイブ

乱読中年、中途と半端を生きる

ジェラール・ドゥニゾ『50の傑作絵画で見る神話の世界』(原著 2017, 訳:遠藤ゆかり 創元社 2023)

多くの日本人にとっては解説がなければどんな情景を描いているのか分からないことの多い西洋絵画の作品のうち、神話の世界を描いた50作品を絵解きする形式で、ギリシアローマ神話の世界をも同時に学べてしまうという企画の画集。

作品全体像とそのもとになる神話を取り上げた後に、4つから6つくらいまでの注目箇所をハイライト表示させた図版とハイライト部位ごとの解説で、絵そのものの要素が持つ表現上の意味とそれに対応する神話のエピソードがより詳細に紹介されていて、描かれたものの背景と選択され強調されたイメージの意味合いが明快になり、漫然と見ている時よりもより多くの感覚と印象が得られる。

ハイライト表示された部分以外についても、逆にそこには何があるのかという興味が湧き、全体像とハイライト付き像とを比較しながら見るという鑑賞の複層化が鑑賞者にとって自然に起こってくるところが素晴らしい。

若年層だけでなく、物覚えが悪くなってしまってきている中高年以降の層にも多くを与えてくれる編集方針には心が動いた。

 

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【目次】
我が子を食らうサトゥルヌス  (フランシスコ・デ・ゴヤ/ピーテル・パウルルーベンス
ユピテルテティス  (ジャン=オーギュスト=ドミニク・アングル)
ヘラ  (ルイ=ジャック・デュボワ)
ネプトゥヌスとアンピトリテの勝利  (フィリッポ・ダンジェリ)
パラス・アテナ  (グスタフ・クリムト
水浴のディアナ  (フランソワ・ブーシェ
アポロンとピュトン  (ジョゼフ・マロード・ウィリアム・ターナー
ヴィーナスの誕生  (サンドロ・ボッティチェッリ
ペルセポネの帰還  (フレデリック・レイトン)
プロメテウス  (ギュスターヴ・モロー
三美神  (ラファエロ
フローラ  (ティツィアーノ
巨人族の没落  (ジュリオ・ロマーノ
バッカスの巫女たちの踊り  (シャルル・グレール)
ネメアのライオンと戦うヘラクレス  (フランシスコ・デ・スルバラン)
ヘラクレスとレルネのヒュドラ  (ギュスターヴ・モロー
負傷したアマゾネス  (フランツ・フォン・シュトゥック)
ヘラクレスとネッソスの長衣  (フランシスコ・デ・スルバラン)
ミノタウロスと死んだ牝馬  (パブロ・ピカソ
キュクロプス  (オディロン・ルドン
戯れるナイアスたち[ネレイスたち]  (アルノルト・ベックリン
水浴する女、または泉のほとりで眠るニンフ  (テオドール・シャセリオー)
パルナッソス山  (ラファエロ
エウロペの略奪  (ポンペイの壁画)
ユピテル(ゼウス)とイオ  (コレッジョ)
レダと白鳥  (ヴェロネーゼ)
ダナエ  (ティントレット)
ダフネにつきまとうアポロン  (ジョヴァンニ・バッティスタ・ティエポロ
ダナイデス  (ジョン・ウィリアム・ウォーターハウス)
アンドロメダを救うペルセウス  (ポンペイの壁画)
シシュポス  (ティツィアーノ
パリスの審判  (ニクラウス・マヌエル・ドイチュ/ジャン=アントワーヌ・ヴァトー)
ヘレネを救うカストルとポリュデウケス  (レオン・コニエ)
シテール島の巡礼  (ジャン=アントワーヌ・ヴァトー)
死の島  (アルノルト・ベックリン
ピュグマリオンとガラテイア  (アンヌ=ルイ・ジロデ=トリオゾン)
エヴァ・プリマ・パンドラ  (ジャン・クザン)
イカロスの墜落のある風景  (ピーテル・ブリューゲル)/イカロスへの哀歌  (ハーバート・J・ドレイパー )
オルフェウスとエウリュディケのいる風景  (ニコラ・プッサン
スフィンクスの謎を解くオイディプス  (ジャン=オーギュスト=ドミニク・アングル)
パリスとヘレネの愛  (ジャック=ルイ・ダヴィッド)
アキレウスアガメムノンの争い  (イル・バチッチョ)
アンドロマケの悲嘆  (ジャック=ルイ・ダヴィッド)
オデュッセウスに杯を差し出すキルケ  (ジョン・ウィリアム・ウォーターハウス)
オレステスの後悔  (フィリップ=オーギュスト・エヌカン)
怒れるメデイア  (ウジェーヌ・ドラクロワ
トロイアでの災難をディドに語るアイネイアス  (ピエール=ナルシス・ゲラン)
エコーとナルキッソス  (ニコラ・プッサン)/ナルキッソス  (カラヴァッジョ)
サビニの女たち  (ジャック=ルイ・ダヴィッド)
レフカス島のサッフォー  (アントワーヌ・グロ)

ギリシア神話ローマ神話の神名対照表