読書三昧(仮免) 禹歩の痛痒アーカイブ

乱読中年、中途と半端を生きる

画集

ヒド・フックストラ編著 嘉門安雄監訳『画集レンブラント聖書  旧約篇』(原著 1982, 学習研究社 1984)『画集レンブラント聖書  新約篇』(原著 1980, 学習研究社 1982)

聖書に題材をとったレンブラントの作品を見ていると、対象となっている聖書の記述を確認したくなる気持ちにさせられる場合が多くあるのではないだろうか? レンブラントの聖書の場面は、いわゆる聖画一般のイメージとは異なり、描かれている人物たちは貧しく…

エルンスト・ファン・デ・ウェテリンク『レンブラント』(訳:メアリー・モートン 木楽舎 2016)

本書はデジタル技術によってリマスタリングされた、オランダレンブラント・リサーチ・プロジェクト(RRP)公認の高精細画像の作品約180点を収録した最新図録集。A4判変型で224ページ、本体定価2500円。かなりお買い得の作品集。収録図版はか…

幸福輝『もっと知りたいレンブラント 生涯と作品』(東京美術 アート・ビギナーズ・コレクション 2011)

見開きページごとにトピックが変わっていて、簡潔かつ印象的にレンブラントの作品世界の様々な特徴に触れることができる、手軽で美麗な美術書。掲載されているカラー図版は他書に比べて明るく鮮明で、細部や暗部がより明瞭に識別することができる。自作と関…

写真:ハーバート・マッター、テキスト:メルセデス・マッター『ジャコメッティ』(原著 1987, 訳:千葉成夫 リブロポート 36X27cm 1988 本体価格12,000円)

創作において自分にも他人にも一貫してきわめて厳しい態度を取り、容易に褒めるようなことがなかったジャコメッティが、自作を撮影した写真に関してほぼ手放しで称賛の意をあらわし、ごく身近な関係者にも見ることを勧めた珍しい写真作品集。 生まれ故郷と作…

アントワーヌ・テラス『ポール・デルヴォー 増補新版(シュルレアリスムと画家叢書3 骰子の7の目)』(原著 1972, 與謝野文子訳 河出書房新社 1974, 2006 )

ポール・デルヴォーの絵画世界は、それに触れた著述家にそれぞれの詩的世界を夢想させる自由を与えているようで、画集の解説文という位置づけにある文章であっても、作品の美術史上の位置づけや意味づけよりも、鑑賞者が受け止めるであろう印象のひとつのケ…

『グランド世界美術 13 デューラー/ファン・アイク/ボッシュ』(講談社 1976 編集解説:前川誠郎 特別寄稿:野間宏 図版解説:勝國興)41×31cm

書名に表記されている画家は3名だが、内容的にはより広範な対象を扱っている画集。構成としては「ファン・アイクからブリューゲルまでの15,16世紀の初期フランドル絵画」と「デューラーの時代―16世紀のドイツ絵画」という二部構成で、ヨーロッパ北部…

元木幸一『西洋絵画の巨匠 12 ファン・エイク』(小学館 2007)31×23cm

ファン・エイクがもたらした油彩技術の革新と新しい絵画モチーフに重点をおいて紹介解説するために、特定作品に比重を置き、全体図と部分図から詳しく説明を施しているのが特徴の画集。ファン・エイクの油彩画30点はほとんど取り上げられているが、そのな…

前川誠郎編著『ファン・エイク全作品』(中央公論社 1980)33×26cm

作品全44点、図版数全106点。内訳は ファン・エイク作が30点、図版数66. ロヒール・ファン・デルウェイデン作が6点、図版数17、 ロベルト・カンピン作が8点、図版数19、 ジャック・ダレー作画4点、図版数4ヤン・ファン・エイクを中心に初…

執筆・監修:河野元昭『琳派原寸美術館 100% RINPA!』(小学館 2022 作品解説:山本毅)30×21cm

俵屋宗達、尾形光琳、酒井抱一、鈴木其一の代表的作品から選りすぐりの23点を原寸で鑑賞。室町末期から江戸末期までの日本近世絵画のなかで独特のデザイン性と高度な技巧で輝きを放っていた琳派の世界に深く入り込むことができる。展覧会に行ってもなかな…

監修:千足伸行『フェルメール原寸美術館 100% VERMEER!』(小学館 2018)30×21cm

フェルメール全作品35点(存疑の「聖女プラクセデス」「フルートを持つ女」は含まない)。人気があるため多くの画集が刊行されているフェルメールであるが、原寸美術館はそのなかでも見る価値の大きな一冊に仕上がっている。 6つのテーマ別に集められた作…

ベルナール・ビュフェの画集三冊

静岡県長泉町にあるベルナール・ビュフェ美術館は表現主義の画家ビュフェの作品のみを収蔵・展示する美術館で、スルガ銀行創業家に生まれ第三代頭取を務めた1973年に岡野喜一郎によって創設された。 ビュフェの作品は第二次大戦を経験した作者の不安で荒…

著・監修:宮下規久朗『カラヴァッジョ原寸美術館 100% CARAVAGGIO!』(小学館 2021)30×21cm

「原寸美術館」シリーズの第7弾。カラヴァッジョの代表的作品30点を、原寸含むカラー図版とカラヴァッジョを専門とする美術史家宮下規久朗の解説で案内する。原寸や通常の画集よりも縮尺の比率が大きい図版で見ると、カラヴァッジョの油彩の技術の高さと…

ミア・チノッティ『カラヴァッジオ 生涯と全作品』(原著 1991, 森田義之訳 岩波書店 1993)34×28cm

カラヴァッジオ研究の権威ミア・チノッティの学術書『ミケランジェロ・メリージ,通称カラヴァッジオ:全作品』(1983)を一般向けに平易に書き直し再構成されたもの。年代順にカラヴァッジオの生涯と作品を追っていく堅実な作家論であり画集でもある。カラー…

『日本の名画2 高橋由一』(中央公論社 1976)34×26cm

日本最初の洋画家と言われる高橋由一画業をカラー図版48点と、絵画に強い比較文学者であり作家の芳賀徹のエッセイ「洋画道の志士――高橋由一の精神史」と、美術評論家青木茂による評伝・作品解説からたどる大型本の作品集。 残存作品が限られているというこ…

『日本の名画24 岡鹿之助』(中央公論社 1977)34×26cm

岡鹿之助の作品は、ある時いっぺんに粒子化して霧散してしまいそうな儚げな佇まいを持っている。 煙突から煙が出ていたり、花瓶に花が生けられていたり、道には轍や人が歩いた跡があったりして、日常的なところも描かれているのに、この人の作品からは、人の…

『毛利武彦画集』(求龍堂 1991)

毛利武彦の名前を知ったのは、たしか有田忠郞の詩集のなかでのこと。本書の巻頭には詩人阿部弘一の詩が寄せられており、詩人との相性が良かったことがうかがわれる。 ちなみに阿部弘一はフランシス・ポンジュのや訳者で、有田忠郎はサン=ジョン・ペルスの訳…

ハンス・ベルメール(1902-1975)の作品集 三冊

頽廃美。20世紀の戦争への怒りを込めた攻撃的な作品群は多くのシュルレアリストたちに受け入れられ、日本では1965年以降の澁澤龍彦の紹介によって広く知られるところとなったハンス・ベルメールは、20世紀ドイツの人形作家かつ写真家であり、画家と…

イアン・ターピン『エルンスト 新装版 <アート・ライブラリー>シリーズ』(原著 1993, 新関公子訳 西村書店 2012)A4変型判 297mm×232mm

カラー図版48点、モノクローム挿図33点。1作品ごとに解説を見開きで配してあるために、参照していると考えられる先行作品との関連や、採用されているエルンストが開発した多様な表現技法の数々についての焦点化が非常にわかりやすい。 河出書房新社刊行…

サラーヌ・アレクサンドリアン『マックス・エルンスト 増補新版(シュルレアリスムと画家叢書5 骰子の7の目)』(原著 1971, 大岡信訳 河出書房新社 1973, 2006 )

シリーズものにはかなり当たりはずれがあって、本シリーズ、河出書房新社の「骰子の7の目 シュルレアリスムと画家叢書 全6巻」はかなりの当たり。画家の全画業をまんべんなくピックアップしながら、図版として選択されている作品は代表作と注目作両方に目…

小出由紀子編著『ヘンリー・ダーガー 非現実を生きる』(平凡社 コロナ・ブックス)

貧困と自閉的な精神的障害のなかで生前誰にも見せることなく孤独に創造の世界に過ごしたヘンリー・ダーガー。死後にダーガーの部屋に残されていた原稿と画集を大家であるネイサン・ラーナーが見つけ、芸術的価値を感じて長年保存、美術関係者や研究者への普…

マックス・エルンスト『慈善週間 または七大元素』(原著 1934, 巖谷國士訳 河出文庫 1997, 河出書房新社 1977)

『百頭女』『カルメル修道会に入ろうとしたある少女の夢』に次ぐコラージュ・ロマン三部作の最終巻。小説と銘打ちながら、章ごとの冒頭にエピグラフとして引かれる他者の文章以外には、エルンストがつけた章題のほかに文章が全くない徹底的で斬新な一冊。2…

パウル・クレー『無限の造形』(ユルグ・シュピラー編 原著 1970, 南原実訳 新潮社 1981 )

『造形思考』に並ぶパウル・クレーの理論的著作。バウハウスにおけるクレーの講義録やメモをまとめ、関連する作品の図版をあわせて著作化したもの。構成は『造形思考』よりも荒く、断片性が強いのだが、情報量も、創作や観賞に関する示唆も、本作のほうが多…

ダグラス・ホール『クレー 新装版 <アート・ライブラリー>シリーズ』(原著 1992, 前田富士男訳 西村書店 2012)A4変型判 297mm×232mm

カラー図版48点それぞれにダグラス・ホールの詩的かつ分析的で要を得た解説と、モノクロームの挿図32点、クレーの生涯を描きだしている巻頭エッセイからなる画集。 西村書店の<アート・ライブラリー>シリーズは、比較的多くの作品を高解像度で収録してい…

日本パウル・クレー協会編『クレー ART BOX ー線と色彩ー』(講談社 2006)

スイスの首都ベルンに2005年にオープンした「パウル・クレー・センター」の開館記念のコンパクトな画集。 版型はA24取で140×148mm。 収録作品は138点で、全部がカラー図版(デッサンはもともと白黒だがカラー写真による掲載)。 孫でパウル・クレー財団…

平松洋解説 新人物往来社編『ギュスターヴ・モローの世界』(新人物往来社 2012)

A5判159ページにモローの代表的作品145点をオールカラーで収めた手軽だが充実した作品集。解説文は章ごとにわずかな分量を占めるに過ぎないが、要点を押さえてギュスターヴ・モローの人物像と作品傾向を伝えているために、ためになる。アカデミック…