読書三昧(仮免) 禹歩の痛痒アーカイブ

乱読中年、中途と半端を生きる

画集

訳編:藤田尊潮『オディロン・ルドン 【自作を語る画文集】夢のなかで』(八坂書房 2008)

自作を語る画文集。未完成の不快感が作品に幻想作用を与えると言っている。 存在感の弱さ、表現技巧の弱さが、逆に魅力となる不思議。 版画を主戦場にモノクローム作品を制作していたが、58歳から油彩とパステルの色彩画に転向。モノクロームの制作のほう…

山田五郎 アルケミスト双書 闇の西洋絵画史 第1期 【黒の闇篇】1~5

テレビでのコメントと同じく、短いなかにも芯を喰った独自の鑑賞眼を披露してくれていて、鑑賞者を飽きさせることなく何度も作品を見ることに誘導してくれる魅惑的なシリーズ。王道の選択を意図的に外すことを心掛け、比較的マイナーな作品を押しつけがまし…

監修:瀧澤秀保、編集・文:ロム・インターナショナル『西洋絵画風景をめぐる12か月』(三才ブックス 2023)

副題は「西洋美術が楽しくなる一日5分の美術鑑賞」で、閏年対応の全366点の作品を解説紹介。書籍サイズがB6判で普通の単行本の大きさに横10.5cmのカラー図版が掲載されている。さすがに細部はよく見てとることはできないが、馴染みの薄い作品がかなり…

ジェラール・ドゥニゾ『50の傑作絵画で見る聖書の世界』(原著 2015, 訳:遠藤ゆかり 創元社 2023)

『50の傑作絵画で見る神話の世界』お姉妹篇。 聖書と絵画の組み合わせ企画の類書はかなり多いなかで作品50点での構成というのはすこし少ないかもしれないが、一枚の作品解説にかける分量が多いので、作品ごとに見るべき特徴を幅広く押さえている。「最後の…

ジェラール・ドゥニゾ『50の傑作絵画で見る神話の世界』(原著 2017, 訳:遠藤ゆかり 創元社 2023)

多くの日本人にとっては解説がなければどんな情景を描いているのか分からないことの多い西洋絵画の作品のうち、神話の世界を描いた50作品を絵解きする形式で、ギリシア・ローマ神話の世界をも同時に学べてしまうという企画の画集。 作品全体像とそのもとに…

『ベリー侯の豪華時禱書』(原著 1988, 著:レイモン・カザル、訳:木島俊介 中央公論社 1989)

フランス王シャルル5世の弟、ベリー侯ジャン1世(Jean Ier, 1340年11月30日 - 1416年3月15日)が生前最後に作らせた豪華装飾写本。完成はベリー公の死後で、制作にあたったランブール兄弟も没した後になる。 ヤン・ファン・エイクも携わった『ベリー公の美わ…

木島俊介『美しき時禱書の世界  ヨーロッパ中世の四季』(中央公論社 1995)

西欧中世の装飾写本の代表的なものを解説付きで概観できる画集兼入門の書。13世紀から16世紀までの写本から101点を厳選し、レイアウトの割合としては基本的に図版4/5解説1/5で構成された書物。日本の鑑賞者限定の出版物でここまで丁寧に仕上げ…

『ベリー公のいとも美しき時禱書』(原著 1998 解説:フランソワ・ベスフルグ+エバーハルト・ケーニヒ, 翻訳:冨永良子 岩波書店 2002)

中世末期の彩飾写本のなかでもひときわ美しく規模の大きな時禱書を紹介解説している大型本。カラーとモノクロを織り交ぜ、多くの図版を使って全体図と部分を隈なく取り上げている充実の一冊。もともと一冊であったものが歴史の中で三分割され、そのうちのひ…

『エッシャー 不思議の秘密』(求龍堂 2023)

2023年12月から2024年9月まで佐川美術館、富山県美術館、豊田市美術館と巡回する日本で開かれているエッシャー展の公式図録。収録図版159点。 特徴は、エッシャーがエッシャーとして知られるような非現実的世界の作品を作成する前の時代のより…

監修:桝田倫広、鈴木俊晴『ゲルハルト・リヒター』(青幻舎 2022)

生誕90年、画業60周年記念、現存する世界最高峰の画家ゲルハルト・リヒターの展覧会の公式図録。 写真を素材として使用した具象画と色彩と筆触との組み合わせから構成された抽象画、そしてガラスや鏡を用いた作品、約140点を収録し、研究者によるエッ…

『熊谷守一 わたしはわたし』(求龍堂 2020)

生誕140周年の熊谷守一展「わたしはわたし」の公式図録。油彩画・日本画・書から201点を掲載。97歳まで描きつづけた熊谷がクマガイ様式やモリカズ様式と呼ばれる独自の作風構築に向かったのは50代も終盤にかかってからのこと。生活にも困窮してい…

マンフレート・ゼリンク『ブリューゲルの世界 目を奪われる快楽と禁欲の世界劇場へようこそ』(原著 2018, 訳:熊澤弘 パイ インターナショナル 2020)

ブリューゲルの代表的作品58点の全図一挙紹介と、8つの観点から作品細部を拡大した図版と組み合わせたブリューゲル専門家の解説から作品世界に分け入っていく構成の、どちらかといえば作品を見ることに重点を置いた作品集。サイズはB5判変型(224×175mm)…

ヒド・フックストラ編著 嘉門安雄監訳『画集レンブラント聖書  旧約篇』(原著 1982, 学習研究社 1984)『画集レンブラント聖書  新約篇』(原著 1980, 学習研究社 1982)

聖書に題材をとったレンブラントの作品を見ていると、対象となっている聖書の記述を確認したくなる気持ちにさせられる場合が多くあるのではないだろうか? レンブラントの聖書の場面は、いわゆる聖画一般のイメージとは異なり、描かれている人物たちは貧しく…

エルンスト・ファン・デ・ウェテリンク『レンブラント』(訳:メアリー・モートン 木楽舎 2016)

本書はデジタル技術によってリマスタリングされた、オランダレンブラント・リサーチ・プロジェクト(RRP)公認の高精細画像の作品約180点を収録した最新図録集。A4判変型で224ページ、本体定価2500円。かなりお買い得の作品集。収録図版はか…

幸福輝『もっと知りたいレンブラント 生涯と作品』(東京美術 アート・ビギナーズ・コレクション 2011)

見開きページごとにトピックが変わっていて、簡潔かつ印象的にレンブラントの作品世界の様々な特徴に触れることができる、手軽で美麗な美術書。掲載されているカラー図版は他書に比べて明るく鮮明で、細部や暗部がより明瞭に識別することができる。自作と関…

写真:ハーバート・マッター、テキスト:メルセデス・マッター『ジャコメッティ』(原著 1987, 訳:千葉成夫 リブロポート 36X27cm 1988 本体価格12,000円)

創作において自分にも他人にも一貫してきわめて厳しい態度を取り、容易に褒めるようなことがなかったジャコメッティが、自作を撮影した写真に関してほぼ手放しで称賛の意をあらわし、ごく身近な関係者にも見ることを勧めた珍しい写真作品集。 生まれ故郷と作…

アントワーヌ・テラス『ポール・デルヴォー 増補新版(シュルレアリスムと画家叢書3 骰子の7の目)』(原著 1972, 與謝野文子訳 河出書房新社 1974, 2006 )

ポール・デルヴォーの絵画世界は、それに触れた著述家にそれぞれの詩的世界を夢想させる自由を与えているようで、画集の解説文という位置づけにある文章であっても、作品の美術史上の位置づけや意味づけよりも、鑑賞者が受け止めるであろう印象のひとつのケ…

『グランド世界美術 13 デューラー/ファン・アイク/ボッシュ』(講談社 1976 編集解説:前川誠郎 特別寄稿:野間宏 図版解説:勝國興)41×31cm

書名に表記されている画家は3名だが、内容的にはより広範な対象を扱っている画集。構成としては「ファン・アイクからブリューゲルまでの15,16世紀の初期フランドル絵画」と「デューラーの時代―16世紀のドイツ絵画」という二部構成で、ヨーロッパ北部…

元木幸一『西洋絵画の巨匠 12 ファン・エイク』(小学館 2007)31×23cm

ファン・エイクがもたらした油彩技術の革新と新しい絵画モチーフに重点をおいて紹介解説するために、特定作品に比重を置き、全体図と部分図から詳しく説明を施しているのが特徴の画集。ファン・エイクの油彩画30点はほとんど取り上げられているが、そのな…

前川誠郎編著『ファン・エイク全作品』(中央公論社 1980)33×26cm

作品全44点、図版数全106点。内訳は ファン・エイク作が30点、図版数66. ロヒール・ファン・デルウェイデン作が6点、図版数17、 ロベルト・カンピン作が8点、図版数19、 ジャック・ダレー作画4点、図版数4ヤン・ファン・エイクを中心に初…

執筆・監修:河野元昭『琳派原寸美術館 100% RINPA!』(小学館 2022 作品解説:山本毅)30×21cm

俵屋宗達、尾形光琳、酒井抱一、鈴木其一の代表的作品から選りすぐりの23点を原寸で鑑賞。室町末期から江戸末期までの日本近世絵画のなかで独特のデザイン性と高度な技巧で輝きを放っていた琳派の世界に深く入り込むことができる。展覧会に行ってもなかな…

監修:千足伸行『フェルメール原寸美術館 100% VERMEER!』(小学館 2018)30×21cm

フェルメール全作品35点(存疑の「聖女プラクセデス」「フルートを持つ女」は含まない)。人気があるため多くの画集が刊行されているフェルメールであるが、原寸美術館はそのなかでも見る価値の大きな一冊に仕上がっている。 6つのテーマ別に集められた作…

ベルナール・ビュフェの画集三冊

静岡県長泉町にあるベルナール・ビュフェ美術館は表現主義の画家ビュフェの作品のみを収蔵・展示する美術館で、スルガ銀行創業家に生まれ第三代頭取を務めた1973年に岡野喜一郎によって創設された。 ビュフェの作品は第二次大戦を経験した作者の不安で荒…

著・監修:宮下規久朗『カラヴァッジョ原寸美術館 100% CARAVAGGIO!』(小学館 2021)30×21cm

「原寸美術館」シリーズの第7弾。カラヴァッジョの代表的作品30点を、原寸含むカラー図版とカラヴァッジョを専門とする美術史家宮下規久朗の解説で案内する。原寸や通常の画集よりも縮尺の比率が大きい図版で見ると、カラヴァッジョの油彩の技術の高さと…

ミア・チノッティ『カラヴァッジオ 生涯と全作品』(原著 1991, 森田義之訳 岩波書店 1993)34×28cm

カラヴァッジオ研究の権威ミア・チノッティの学術書『ミケランジェロ・メリージ,通称カラヴァッジオ:全作品』(1983)を一般向けに平易に書き直し再構成されたもの。年代順にカラヴァッジオの生涯と作品を追っていく堅実な作家論であり画集でもある。カラー…

『日本の名画2 高橋由一』(中央公論社 1976)34×26cm

日本最初の洋画家と言われる高橋由一画業をカラー図版48点と、絵画に強い比較文学者であり作家の芳賀徹のエッセイ「洋画道の志士――高橋由一の精神史」と、美術評論家青木茂による評伝・作品解説からたどる大型本の作品集。 残存作品が限られているというこ…

『日本の名画24 岡鹿之助』(中央公論社 1977)34×26cm

岡鹿之助の作品は、ある時いっぺんに粒子化して霧散してしまいそうな儚げな佇まいを持っている。 煙突から煙が出ていたり、花瓶に花が生けられていたり、道には轍や人が歩いた跡があったりして、日常的なところも描かれているのに、この人の作品からは、人の…

『毛利武彦画集』(求龍堂 1991)

毛利武彦の名前を知ったのは、たしか有田忠郞の詩集のなかでのこと。本書の巻頭には詩人阿部弘一の詩が寄せられており、詩人との相性が良かったことがうかがわれる。 ちなみに阿部弘一はフランシス・ポンジュのや訳者で、有田忠郎はサン=ジョン・ペルスの訳…

ハンス・ベルメール(1902-1975)の作品集 三冊

頽廃美。20世紀の戦争への怒りを込めた攻撃的な作品群は多くのシュルレアリストたちに受け入れられ、日本では1965年以降の澁澤龍彦の紹介によって広く知られるところとなったハンス・ベルメールは、20世紀ドイツの人形作家かつ写真家であり、画家と…

イアン・ターピン『エルンスト 新装版 <アート・ライブラリー>シリーズ』(原著 1993, 新関公子訳 西村書店 2012)A4変型判 297mm×232mm

カラー図版48点、モノクローム挿図33点。1作品ごとに解説を見開きで配してあるために、参照していると考えられる先行作品との関連や、採用されているエルンストが開発した多様な表現技法の数々についての焦点化が非常にわかりやすい。 河出書房新社刊行…