読書三昧(仮免) 禹歩の痛痒アーカイブ

乱読中年、中途と半端を生きる

画集

『日本の名画24 岡鹿之助』(中央公論社 1977)34×26cm

岡鹿之助の作品は、ある時いっぺんに粒子化して霧散してしまいそうな儚げな佇まいを持っている。 煙突から煙が出ていたり、花瓶に花が生けられていたり、道には轍や人が歩いた跡があったりして、日常的なところも描かれているのに、この人の作品からは、人の…

『毛利武彦画集』(求龍堂 1991)

毛利武彦の名前を知ったのは、たしか有田忠郞の詩集のなかでのこと。本書の巻頭には詩人阿部弘一の詩が寄せられており、詩人との相性が良かったことがうかがわれる。 ちなみに阿部弘一はフランシス・ポンジュのや訳者で、有田忠郎はサン=ジョン・ペルスの訳…

ハンス・ベルメール(1902-1975)の作品集 三冊

頽廃美。20世紀の戦争への怒りを込めた攻撃的な作品群は多くのシュルレアリストたちに受け入れられ、日本では1965年以降の澁澤龍彦の紹介によって広く知られるところとなったハンス・ベルメールは、20世紀ドイツの人形作家かつ写真家であり、画家と…

イアン・ターピン『エルンスト 新装版 <アート・ライブラリー>シリーズ』(原著 1993, 新関公子訳 西村書店 2012)A4変型判 297mm×232mm

カラー図版48点、モノクローム挿図33点。1作品ごとに解説を見開きで配してあるために、参照していると考えられる先行作品との関連や、採用されているエルンストが開発した多様な表現技法の数々についての焦点化が非常にわかりやすい。 河出書房新社刊行…

サラーヌ・アレクサンドリアン『マックス・エルンスト 増補新版(シュルレアリスムと画家叢書5 骰子の7の目)』(原著 1971, 大岡信訳 河出書房新社 1973, 2006 )

シリーズものにはかなり当たりはずれがあって、本シリーズ、河出書房新社の「骰子の7の目 シュルレアリスムと画家叢書 全6巻」はかなりの当たり。画家の全画業をまんべんなくピックアップしながら、図版として選択されている作品は代表作と注目作両方に目…

小出由紀子編著『ヘンリー・ダーガー 非現実を生きる』(平凡社 コロナ・ブックス)

貧困と自閉的な精神的障害のなかで生前誰にも見せることなく孤独に創造の世界に過ごしたヘンリー・ダーガー。死後にダーガーの部屋に残されていた原稿と画集を大家であるネイサン・ラーナーが見つけ、芸術的価値を感じて長年保存、美術関係者や研究者への普…

マックス・エルンスト『慈善週間 または七大元素』(原著 1934, 巖谷國士訳 河出文庫 1997, 河出書房新社 1977)

『百頭女』『カルメル修道会に入ろうとしたある少女の夢』に次ぐコラージュ・ロマン三部作の最終巻。小説と銘打ちながら、章ごとの冒頭にエピグラフとして引かれる他者の文章以外には、エルンストがつけた章題のほかに文章が全くない徹底的で斬新な一冊。2…

パウル・クレー『無限の造形』(ユルグ・シュピラー編 原著 1970, 南原実訳 新潮社 1981 )

『造形思考』に並ぶパウル・クレーの理論的著作。バウハウスにおけるクレーの講義録やメモをまとめ、関連する作品の図版をあわせて著作化したもの。構成は『造形思考』よりも荒く、断片性が強いのだが、情報量も、創作や観賞に関する示唆も、本作のほうが多…

ダグラス・ホール『クレー 新装版 <アート・ライブラリー>シリーズ』(原著 1992, 前田富士男訳 西村書店 2012)A4変型判 297mm×232mm

カラー図版48点それぞれにダグラス・ホールの詩的かつ分析的で要を得た解説と、モノクロームの挿図32点、クレーの生涯を描きだしている巻頭エッセイからなる画集。 西村書店の<アート・ライブラリー>シリーズは、比較的多くの作品を高解像度で収録してい…

日本パウル・クレー協会編『クレー ART BOX ー線と色彩ー』(講談社 2006)

スイスの首都ベルンに2005年にオープンした「パウル・クレー・センター」の開館記念のコンパクトな画集。 版型はA24取で140×148mm。 収録作品は138点で、全部がカラー図版(デッサンはもともと白黒だがカラー写真による掲載)。 孫でパウル・クレー財団…

平松洋解説 新人物往来社編『ギュスターヴ・モローの世界』(新人物往来社 2012)

A5判159ページにモローの代表的作品145点をオールカラーで収めた手軽だが充実した作品集。解説文は章ごとにわずかな分量を占めるに過ぎないが、要点を押さえてギュスターヴ・モローの人物像と作品傾向を伝えているために、ためになる。アカデミック…