読書三昧(仮免) 禹歩の痛痒アーカイブ

乱読中年、中途と半端を生きる

府中市美術館編著『与謝蕪村 「ぎこちない」を芸術にした画家』(東京美術 2021)

画家としての与謝蕪村 を「ぎこちなさ」や「頼りなさ」をあえて追求した元祖ヘタウマの人として顕彰した美術書。2021年の府中市美術館主催の与謝蕪村展の公式図録。104点の作品から蕪村のゆるさの魅力に引き込もうとしている府中市美術館学芸員金子信久の蕪村愛がひしひしと伝わってくる一冊。
通常の図版のほかに、ときどき軸装され壁に掛けられた状態の写真や室内に置かれた状態の屏風の写真が掲載されていて、作品の味わいがぐっと引き立っているところも見て取れる。美術館や美術本ではなく、室内で座って眺めるのが本来的な鑑賞の仕方なのだなということが少しわかったところにも本書の良さが出ていると思う。日本の江戸期ならではの作品世界を堪能できる。また俳句(書)と絵の組み合わせの作品がいくつも取り上げられているため、俳人蕪村のほうへの関心もずいぶんと呼び覚まされる。
ちなみに国宝の『夜色楼台図』はこの展覧会では展示されていなかったため本書での言及もない。

 

www.tokyo-bijutsu.co.jp

www.city.fuchu.tokyo.jp

【目次】
1 「ぎこちない」からのスタート
 蕪村と丹後
2 二つの仕事―中国風の絵と俳諧の絵
 中国風の絵
 俳諧の絵
 蕪村と芭蕉
 蕪村と応挙、呉春
 広がる蕪村の「ヘタウマ」的スタイル 
3 「ぎこちない」を芸術にした画家
 「苦み」を味わう芸術
 「かわいい」を楽しむ芸術
 「光と空気と情感」の芸術


【付箋箇所】


与謝蕪村
1716 - 1784

ja.wikipedia.org