ヨハネス・ドゥンス・スコトゥスを軸に語られる中世哲学、中世の神学の入門書。近代科学、哲学を用意することにもなるドゥンス・スコトゥスの思想を一般向けに精妙に紹介してくれている。
平凡社ライブラリー『中世思想原典集成 精選6 大学の世紀2』所収のドゥンス・スコトゥス「第一原理への論考」を読んでみたが、予備知識もほとんどない状態だったので、ほとんど読み解くことができないでいたところで、大いに助けになった一冊。神については「客観的な」「神の存在証明」を基礎に語られる場合、人格神の色合いが薄れるので、宗教的でない私のような人間でもあまり違和感なく読み進めることができる。
63,93,111,119,141,152,175,181,196,199,238といったところに付箋。
しかし、自分の根源を探求しても、そこには「無」という、とらえどころのない底が見えてくるだけである。なぜなら、ヨハネスによれば、知性は純粋可能性であり、そこには実質的な核が先立って在る、ということはないし、さらに、意志は、「自由である」ということのみを根拠としてもつ能力であって、ほかに根拠がないからである。ヨハネスの仕事を知っていれば、この結論ははじめから明らかなのである。そしてヨハネスを知らないがために、二〇世紀にまでなってハイデガーが、自我の根底に「無」を見出し、新たな発見であるかのように「不安」を語ったのも、実はこの結果にすぎない。ハイデガーはヨハネスの存在論をかいま見ただけで、自由意志論は知らないのである。(「自由と意志」p196)
宗教者はかつて考えてきたし、今現在も考えている。非宗教者もこれまでもこれからも考える。ともに考えられてきたことの歴史のなかで考える。
内容:
その一 生涯の風景
その二 神の存在
その三 個別性について
その四 記憶と理解と愛(三位一体論)
その五 自由と意志
その六 時間と宇宙