読書三昧(仮免) 禹歩の痛痒アーカイブ

乱読中年、中途と半端を生きる

武田祐吉校訂『拾遺和歌集』(第三勅撰和歌集 1005-07年成立 岩波文庫 1938) 【八代集を読む その2】

藤原公任撰の『拾遺抄』と時をほぼ同じくして、公任の撰歌の影響のもとに花山院自身が編纂に深く関わった第三勅撰集。『拾遺抄』の増補版という趣の詞華集。全一三五一首。紀貫之の113首に次いで万葉歌人柿本人麻呂の作品が長歌も含め104首とられているのと、『後撰和歌集』の撰者五名の収録歌が、源順27首、大中臣能宣54首、清原元輔46首、坂上望城1首、紀時文0首というところが特徴。『古今和歌集』から100年、『後撰和歌集』から50年、和泉式部などの新しい歌人が取り入れられるようになってはいるが万葉集からの再録が多く停滞している印象も受ける。新しく採られた歌人の歌が、王朝サロン内で主流だった平明優美な歌風のものが多いことも、詞華集としてどことなく薄い印象を受ける要因になっているのかもしれない。また、小倉百人一首には『拾遺和歌集』から8首採られているので晩年の定家の趣味には適っていたのかもしれないし、その8首の印象が強いこともあって他の歌があまり目立たなくなってしまったということもありそうだ。私自身はよみ人しらずの歌に魅かれるものが多かった。

春の野に生ふるなきなの侘しさは身をつみてだに人のしらぬよ よみ人しらず

風さむみ聲よわり行く蟲よりもいはで物思ふ我ぞまされる よみ人しらず

数ならぬ身で、知られぬ名で、鬱々とする憂し世での思いは、千年くらいは簡単に貫いてくる。

www.iwanami.co.jp

【付箋歌】
25, 53, 60, 336, 442, 462, 621, 678, 685, 698, 710, 751, 766, 778, 826, 913, 918, 950, 964, 1000, 1006, 1051, 1054, 1128, 1158, 1252, 1265, 1271, 1300, 1313, 1322,1327, 1342

武田祐吉
1886 - 1958