読書三昧(仮免) 禹歩の痛痒アーカイブ

乱読中年、中途と半端を生きる

植木豊編訳『プラグマティズム古典集成 パース、ジェイムズ、デューイ』(作品社 2014)からデューイの5つの論考を読む

デューイのプラグマティズム、特に民主主義を論じたものよりも認識論や論理学に言及することの多い哲学的な論考に関しては、きわめて明朗快活で、読んでいて気持ちがよいものが多い。それらの論考のなかでは、実践的な未来志向の思考とコミュニケーションを重視しているところが特徴的で、特定の真理観や世界観によって思考や行為が不必要に束縛されることを問題視している。

精神の機能は、新しく、今以上に複雑な目的を視野に据える、つまり、型にはまった手順と気紛れから経験を解放することにある。身体機構においてであれ、あるいは現状の社会機構においてであれ、既に与えられた目的を達成するために思考を用いるのではなく、行為を束縛から解放し自由にするために知性を使用すること、これこそ、プラグマティズムの教えである。
(「哲学の回復の必要」より )

自由と創造的成果の獲得を語ることの多いデューイのプラグマティズムは、とてもアメリカ的な発想であるのだが、自身の思索を展開するにあたってよくスピノザを引用してくるところにちょっとっした驚きがある。決定論的な部分に関しては否定的な言辞となる場合もあるのだけれど、自由と善、力能と法についてのスピノザの思考については極めて好意的に捉えている。本書収録の論考では「自由についての哲学上の諸学説」がそうだし、先に読んだ『確実性の探究』にもスピノザが肯定的に参照されている。デューイとスピノザというのは、私にはたいへん刺激的な組み合わせに見えるので、気にして見ていくようにしたいと思っている。

 

本書に収録されているのは以下五つの論考。時代的にパース、ジェイムズの後に収められている。

「パースのプラグマティズム」(1916年)
アメリカにおけるプラグマティズムの展開」(1925年)
「真理に関する提要問答」(1910年)
「哲学の回復の必要」(1917年)
「自由についての哲学上の諸学説」(1928年) 

 

sakuhinsha.com

【付箋箇所】
「パースのプラグマティズム」(1916年)
13
アメリカにおけるプラグマティズムの展開」(1925年)
334, 342, 355, 357
「真理に関する提要問答」(1910年)
470, 477
「哲学の回復の必要」(1917年)
485, 487, 489, 506, 508, 509, 511, 516, 517, 524, 526, 530, 533, 536, 537, 538, 542
「自由についての哲学上の諸学説」(1928年) 
544, 548, 554, 556, 568, 572

 

植木豊
1958 -
ジョン・デューイ
1859 - 1952

参考:

uho360.hatenablog.com

uho360.hatenablog.com