読書三昧(仮免) 禹歩の痛痒アーカイブ

乱読中年、中途と半端を生きる

松田武夫校訂『後撰和歌集』(第二勅撰和歌集 951年下命、957-959年成立 岩波文庫 1945) 【八代集を読む その1】

古今和歌集』から四十年余り後に村上天皇の下命によって編纂された二番目の勅撰和歌集。全一四二六首。源順・大中臣能宣清原元輔坂上望城・紀時文の五名が撰者として任命されたものの、撰者の歌が含まれていないのが特徴。収録歌が多いのは古今時代の歌人で、紀貫之と伊勢が突出して、凡河內躬恒が次いで、そこからすこし控え目に当代の歌人たち大輔、藤原敦忠藤原兼輔藤原時平藤原師輔、藤原實賴、藤原敦忠などがつづく。紀貫之と伊勢と凡河內躬恒については本歌集を読みすすめるごとに頻繁に登場してくるため、それぞれの家集で全体的な歌人像をあらためて確認したくなるほどであった。詞華集を各歌人への入口や再入門のきっかけとして使うというのはわりと一般的な接し方なのだろうとあらためて感じ取れたのが収穫といえばいえる。また、『古今和歌集』にくらべれば紙の本では接することの少ない『後撰和歌集』の収録歌でも、百人一首収録歌をはじめとしてかなり有名な歌が含まれていて、かなり馴染み深くしかも充実感を持って読むことができるのは発見だった。
今回は図書館から借り出しただいぶ古い岩波文庫版で読んだのだが、ネット上にはウィキソースをはじめ複数のテキストが存在しているので、読むだけでなく、調査研究するための原資料としていろいろ使えるようだった。紙でも電子テキストでも読める古典というのは、まだまだ潜在的なパワーを持っているようだ。

秋山の霧とびわけてくる雁の千世にかはらぬ聲きこゆなり 貫之

なく聲にそひて涙はのぼらねど雲のうへより雨とふるらむ 伊勢

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【付箋歌】
11, 26, 55, 92, 136, 170, 197, 203, 252, 257, 286, 294, 302, 306, 315, 319, 323, 335, 357, 407, 438, 452, 456, 470, 476, 491, 507, 508, 515, 541, 578, 603, 643, 701, 727, 777, 780, 796, 828, 851, 897, 905, 941, 961, 967, 1014, 1090, 1126, 1275, 1400, 1424

松田武夫
1904 - 1973